動画を見ただけでは、全然ピンと来ないでしょうから、ぜひ、実際のペダルとバスドラムを使って試してみて下さい。
上手く行くと、あまりにも簡単に、タイトな音色で大音量が出せるので、驚くと思います。実は、上手いドラマー達は、キックを、こうやって踏んでいたんです。(*2)
実際に、ハービー・メイソンやバーナード・パーディー等が、インタビューなどで「ペダルは“踏む”のではなく“離す”ようにしている」と語っています。
ところで、なぜ「踏み方」ではなくて「離し方」が重要になるのでしょうか? ここを理解しておく事は非常に大切です。
結論から言えば、キックペダルは「ビーターの戻りが大きいほど、大音量が出る」構造になっているからです。(*3)
非常に多くのドラマーが、キックペダルの存在を軽視して、脚の動かし方ばかりを議論していますが、フットワークを考える時、最初にやるべき事は、キックペダルという「機械」の「動作」を正しく理解する事です。
そして、ビーターを大きく戻すためには、バネの反発力が大きい必要があり、実際の演奏時に、バネの反発力が最大になるのは、ヘッドの上にビーターを止めた状態です。
その状態から、出来るだけ素早く脚を離す(*4)ことにより、ペダルは脚の重さから一気に開放され、最大になっていたバネの反発力によって、ビーターが最速で戻って来ます。
(※「ビーターの戻り方」に着目して、もう一度動画を見てみて下さい!)
その、最もビーターが戻った辺りで、脚がペダルボード上に落ちて来れば、バネの反発力に一切邪魔されずに、片脚分の重さが一気にビーターにまで伝わり、ヘッドをヒットします。
人間の場合、片脚の重さは体重の6分の1位ありますから、それが落下する衝撃力は、そうとうな物です。(*5)
ペダルやバスドラムを「破壊する」のではなく、「大音量を出す事が目的」なら、それだけで必要充分以上です。
さらに、ロックに必要な、「迫力のある音色」を出すために、ヒットの瞬間に足の指を使ってペダルボードを押して、ヘッドにビーターを軽く食い込ませてやります。(*6)
こうすると、ヒットが終わった瞬間に、再び、強いキックのための準備も完了するので、一石二鳥となります。
この奏法は、あくまでも「ロック用」の踏み方ですが、現在(21世紀初頭)のポピュラー音楽演奏は、大部分がロックを基本としていますから、最も実用性の高い奏法です。
キックの基本中の基本ですので、ぜひ、マスターして下さい。
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*2 一連の動作を文字で表すと、<あらかじめビーターをヘッドに止めておき、ペダルボードから脚を素早く離したら、力を抜いて、つま先から落とし、指で押さえて再びビーターをヘッドに止める>という事になります
*3 逆に言えば「小音量で演奏したい場合は、出来るだけビーターを戻さないようにすれば良い」という事になります。
事実、ジャズ等では「ビーターをできるだけ戻さない」事が大切になります
*4 最速で脚をペダルから離すためには、<熱さを感じて思わず足を引っ込める>というような「本能的な動き」を利用するのが一番です。(重心も崩れません)
*5 脚には充分な重さがありますから、自然落下させるだけでパワーは充分です。
通常のフットワークでは、筋力で上から下に脚を動かす必要は全くありません
*6 これをやろうとすると、奏法は基本的に「クローズ」になります。ロックの場合、連打以外のキックを「オープン」で踏もうとするのは、かえって不合理です
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