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★ 超人ドラマー:バディ・リッチ


超人ドラマーは多くても、超人中の超人、他に並ぶ者がいないのが、バディ・リッチです。

1990年代以降、国内でもバディ・リッチの演奏映像を見ることが出来るようになって、ようやく正当な評価がされはじめた(*1)ようですが、それでも日本では、まだまだ、バディ・リッチの評価は低すぎると思います。

もちろん、スラッシュメタル系から始まった「足のスピード&テクニック競争」が、ペダル自体の進化とあいまって、トーマス・ラングのように、本当の意味で「手と足を全く同じように使って演奏できる人」も登場して来てましたし、今後も世界を驚嘆させる凄いドラマーは多数出てくるでしょう。

*1 ビデオが出るまでは、バディ・リッチにしては、さほど良い演奏とはいえない『Mercy, Mercy』くらいしか聴いた事がなかったからでしょう。ドラム雑誌でも「単なるサーカスドラマー」「テクニックはシングルストロークだけ」などとヒドイ書かれようでした。恐ろしいことですね。


しかし、バディ・リッチの凄さは、全く次元が違うものです。

たとえば、すでに本人の生演奏が聴けない現在では、バディ・リッチの「パワー」が実体験出来ませんから、多くの人はおそらく「所詮、ジャズドラマーだから」と甘く見て、まさか、バディ・リッチが、ジョン・ボーナムのような大音量で演奏していたなどとは思っていないでしょう。

ところが、バディ・リッチの第一に凄いところは、ジョン・ボーナム並か、それ以上のパワーで、あのスピードドラミングを晩年まで行なっていたということなのです。

ウソだと思う人は、ぜひ、DCIビデオ『Buddy Rich Jazz Legend: Part2 1970-1987』を手に入れて下さい。

ビデオ冒頭部で、ジョン・ボーナムも真っ青の物凄い音色でドラムを炸裂させている、60才代(1980年代)のバディ・リッチを見る事が出来ます。もし、ジョン・ボーナムが存命だったとしても、60歳過ぎてこんな音は絶対に出せなかったでしょう。

これは、無理やりスポーツに喩えていうなら、バディ・リッチだけが、年齢に関わらず「短距離走のスピードでマラソンが走れた」…というようなものです。事実、デニチェンでさえも超高速シングルストロークではパワーが落ちますし、長くてもせいぜい4小節でしょ?

ところが、バディ・リッチの場合、1曲通して速いなんてことは日常茶飯事で、それが何曲も続いたステージの最後に延々とドラムソロをやり、さらにその最後に、極めつけの大パワー&超スピードのシングルストロークを炸裂させ、その後も曲に戻って叩きまくる(例:『ウエストサイド・ストーリー』)などということを、69歳の晩年までやっていたのです。

今現在、パワーやスピードを誇って君臨している若いトップドラマー達の、いったい何人が60歳を過ぎても同じパワーとスピードを維持できているでしょうか? 文字通り、バディ・リッチの凄さは「ケタが違う」のです。

また、バディ・リッチのドラミングがどんなに大変なものなのかは「コピーしてみようとして初めて分かる」…というものが多いです。どんなに速いフレーズでも、パワーが落ちずに、ハッキリ音符が聴き取れるため、聴いているだけだと「出来そうな」気がしてしまうのです。

たとえば、CD『BIG SWING FACE』に入っている、『LOVE FOR SALE』後半ブレイクの、3小節余りのアクセント付きシングルストロークは、ファンには有名なフレーズで、簡単に耳コピーできますし、譜面にしてみても実にシンプル↓です。



Love For Sale後半のBuddy Richのソロ
『Love For Sale』後半のBuddy Richのソロ(筆者の耳コピー)


ところが、いざ、やってみようとすると、全然出来ないのです。

該当部分は234BPM位なので、32分音符に換算すれば117BPMですから、けっして不可能な速さではないのですが、バディ・リッチのように演奏することは到底出来ません!

僕自身、このたった3小節を攻略するのに、8年も使ってしまいました(苦笑)。(*2)

一番分かりやすい例としてあげましたが、これは、たった3小節のフレーズだから「もしかしたら自分も真似出来るかも」と思えるのであって、これ以上の高難度のプレイが延々と続いているのが、バディ・リッチのドラミングなのです。

他にも「そうとうな速さの4ビートなのに左手がず〜っと動きっぱなし」というのがあります。しかも、単なる手癖で動かしているのではなく、よく聴くと見事に音楽になっている。そしてバディ・リッチ本人は、まるで口笛でも吹いているかのように楽しげに演奏しているのです。









*2 このエッセイをサイトにアップする少し前(2005年初頭)からチャレンジし始め、当初220BPMまでしか出来なかったのが、ようやく234BPMでなんとか出来るようになったのが、2013年1月でした。
 でもまだ「とりあえずフレーズが叩けた」だけで、本人のような、素晴らしいキレやスピード感、うねり、音粒の立ち具合なんかは、全然再現できていません。


生まれついてのエンターテイナー(*3)だったためか、バディ・リッチは「観客が楽しむこと」を優先させて、難解なことはやりませんでした。物凄いテクニックを使って観客をビックリさせるような時でも、常に「分かりやすい」ように演出していました。

そのせいか、あるいは、マイルス・デイビスが(自分から望んでバディ・リッチと演りたがったのに)バディ・リッチをけなすような言動をしたのを真に受けてか、日本では「芸術性が低い」などというバカな評価をする人も少なくありませんが、まるっきり見当ハズレです。


*3 バディ・リッチは舞台芸人の両親の元に生まれ、なんと、1歳半でドラマーとして舞台にデビュー(!)、以後20年近くは舞台芸人ドラマー(?)として活躍し、その後にジャズドラマーになったのです。


バディ・リッチを知らずしてドラムを語るなかれ。音だけでなく、映像を見てこそ、バディ・リッチの本当のスゴサが分かります。

空中に「優雅な弧を描く」スティックさばきの見事さや、文字通り「スティックが踊る」トラディショナル・グリップの左手の素晴らしさは、ドラマーなら絶対に見ておくべきだと思います。

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DRUMMERWORLDこちらのページでバディ・リッチの演奏映像を見る事が出来ます。スティックワークが速すぎて動画の限界を越えてます(笑)。
 バディ・リッチを初めて見る人は、The Amazing Solo 1978から見るのがオススメです。
 こんなに「自由自在」なスティックワークには、他ではお目にかかれないと思います。それにしても、一番最後、いつスナッピーのスイッチを外したのか分かる人います?

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