さて、ようやく手に入れたDVDを、もう、何度も何度も見ていますが、これはまさしく「伝統的・正統的なマーチングスネアドラミングの、理想的な教科書」だと思います。(*5)
左右のスティックの動きが、見事なまでに揃っており、打点も、スネア中央から左右に2cm程度ずつ離れた所だけ、コーティングがはげているという状態。
音色も「ピンポン球が壁から跳ね返る時のような」という、マーチングの理想の音そのもので、とにかく綺麗。
しかも、スネアの上端と中央付近の音色の違いを利用して、たった一台のスネアの上で、見事なまでに音色を操る。
そして、なにしろ素晴らしいのが、ダブルストローク。ここまで完璧に音量や音色が揃ったダブルは、この人以外では、聴いた事がありません。
バディ・リッチのシングルストロークと同じで、「基本を極めると、とんでもない事になる」というヤツですね。
さらには、スティックエンドを使って叩く、マーチングでお馴染みの「バックスティッキング」という奏法も、この人は「違う音色のアクセント」として使っているんです!
さらにさらに! スネアヘッドのセレクトが素晴らしく、「スネアだけは、やっぱりコーテッドじゃなきゃ…」という僕の思い込みを、簡単に、かつ完璧に、ぶち壊してくれました。
う〜ん…、まだまだ書きたい事は、山ほどあるのですが、もう長くなりすぎるので、この辺にしておきましょう(苦笑)。
バディ・リッチが「型破りで自由自在なスティックワーク」の天才なら、ダニー・レイモンドは「極限まで研ぎ澄まされたスティックワーク」の達人でしょう。
方向性は違いますが、どちらも手の技術の頂点ですから、ドラマーならば、絶対に見ておくべきものです。
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*5 門外漢が言うべき事ではないかも知れませんが、現在のDCI系は「競技」的な方向に走り過ぎ、音楽面がおろそかになっていると感じます。
古典的モーラー奏法について
ダニー・レイモンドの奏法は、『モーラーブック』そのものの左手のグリップや、右手が「回外」の形で振り上げられている事などから、「古典的モーラー奏法」の流れに属するものと考えられます。
(注:ジム・チェイピンの奏法は「チェイピン式モダン・モーラー」とでも言うべきもので古典的モーラーではありません)
ドラムコー方面には、グラッドストーン系の人が多い(石川直氏なんかは典型)と感じていたのですが、「マーチングでも、やはり最後は、モーラーになるのか」と…。
しかも、スティーヴ・ガッドや、ジョー・ポーカロ(ジェフの父)も、腕の振り上げ方がダニー・レイモンドとそっくりなので、同じ系統(古典的モーラー系?)の先生に、ルーディメンツを教わったと考えられます。
欧米圏のドラマー達には、マーチングを通してモーラー系の奏法を(ほとんどの場合、それを「モーラー奏法」とは知らずに)身に付けている人が少なくないのでは?
スティックトリックについて ダニー・レイモンドのDVDを見るまでは「スティックトリックなんて無意味」と思っていた僕ですが、この人の「スティックトリック解説」を見ているうちに、「スティックトリック練習によって鍛えられた精密な手のコントロール」が、演奏の凄さと無関係ではない事に気が付き、今では、スティックトリックを練習メニューに取り入れようと、真剣に考え始めています(笑)。
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