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★ 超人ドラマー:ダニー・レイモンド
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まだしばらくは「ダニー・レイモンド?誰それ?」という人が、ほとんどでしょう(*1)から、事の経緯を説明しておきましょう。

僕自身は、マーチング(ドラムコー)の経験は全く無いのですが、だからこそでしょうか? マーチングの世界に関しては、いつもどこかで気にかかっていました。



*1 …と思ったのですが、2009年秋から、Pearlのモニターになったそうなので、近い将来、国内でも有名になるかも…。


特に、ドラムを始めて以来、ずっと考え続けて来たのは、「マーチングスネアの名人・達人と呼ばれる人のスティックテクニックは、どのくらい凄いのだろうか?」という事です。

なぜって、ドラマー仲間の間では、「俺たちが、どんなにスティックテクニックを鍛えても、マーチングスネアの達人には到底かなわない」と、よく言われていたからです。



ところが、この30年間、有名なマーチングドラマー達の演奏に触れる機会は何度もあったものの、正直「到底かなわない」とまで感じた事は、一度もなかったのです。(*2)

それでも、自分が知らないだけで、やはり凄い名人がいるのかも知れない…と、ある日思い立って、YouTube内のドラムコー関連動画を、次々に見て行く事にしました。

そして、2〜3時間も見続けたでしょうか、さすがに目が疲れ、収穫も無く、「もうやめようかな」と思い始めた頃の事…。

それは、奇妙な動画でした。林道のような場所で「冴えないオッサン」が、スネアの前に立ち、手をほぐしているのです。

若くてカッコイイ、DCIのスネアチャンピオン達(*3)を沢山見た後でしたから、第一印象は「期待出来なさそう…」でした。

でも、スネアの音が出た瞬間に、僕の目は画面に釘付けになり、数秒後には、完全にノックアウトされてしまいました。




*2 もちろん、投げたり回したりのスティックトリックの見事さには関心しますが、実際に「音符を叩く」部分のスティックワークに関しては、バディ・リッチを知っている目から見れば、驚くほどではありませんし、残念ながら、音楽的な意味でも「凄い!」と思える演奏には出会えませんでした。
 また、1990年代位から使われ始めた、ドラムコー専用の超ハイピッチなスネアドラムの音が「固い練習台」か「アルミ板」を叩いているように聴こえて、どうしても「良い音」とは思えませんでした。



*3 後から知ったのですが、DCIには「21歳まで」という年齢制限があるんですね。


これが↓その動画です。再生ボタンを押して下さい


見終わってから読んでいる方には、わざわざ語るまでもないと思いますが、マーチングの達人は、実在したんですね…。

物凄いキレ味と圧倒的なスピードで、スネアの上をハネ回るスティック! しかも、粒立ち抜群、かつ多彩な音色で、ダイナミクス幅の豊かな、実に音楽的な演奏!

01:13にブレイクした瞬間には、思わず「ぅおお!!」と唸ってました。「この人、ハンパじゃねえ…」

そして、「ボレロ」のようなゆったりした中間部から、腕に高性能モーターでも内蔵されてるんじゃないかというような、超・超絶技が連続する後半部…。もう、ため息しか出ません。

「いったい、何者なんだ、この人は…」

すぐに、[Danny Raymond]で、YouTube内を検索してみましたが、見つかった動画は、たった3本だけ。

LET IT RIPという教則DVDが出ていて、ジョー・モレロや、ラルフ・ハーディマン等のビッグネームが賞賛のコメントを寄せている事は分かりましたが、こんなに凄い人が、アメリカ国内でも、ほとんど知られていないようなのが不思議でした。(*4)

でも、動画を何度見直しても、凄いのは間違いなく、しばらくは、毎日のように動画を見て「やっぱスゲエ…」とため息をつき、中級以上の生徒さんには「マーチングの達人を発見したから動画を見てみて!」と話しまくる日々が続いて…。

やがて、DVDの販売元サイトに、収録されている9曲全部のデモ動画があるのを発見したんですが、ドラムコー用のスネアだけでなく、通常のスネアや、南北戦争の頃のスネアのレプリカでのデモ、ブラシを使ったプレイまであって、もう、DVDそのものを手に入れなくては気が済まなくなってしまいました(笑)。

(*4) その後、本人のサイト等も発見し、お父さん(ダニー・レイモンド・シニア)が有名なマーチングの先生だった事、1989年と90年の2年連続で、DCA I&Eのソロスネアチャンピオンになった後、アメリカのディズニー・ワールドで20年間「ジャミターズ」の一員として、パーカッション・アトラクションを行っていた事、現在は複数のドラムコーの指導やクリニック等を行いながら、地元の小さな楽器屋さんでもドラムを教えている事などが分かりました。
 こんな凄い人に教われるなんて、地元の少年少女達は、超ラッキーですね


DVD LET IT RIPの中の1曲(音が小さい場合は音量を上げて下さい)


さて、ようやく手に入れたDVDを、もう、何度も何度も見ていますが、これはまさしく「伝統的・正統的なマーチングスネアドラミングの、理想的な教科書」だと思います。(*5)

左右のスティックの動きが、見事なまでに揃っており、打点も、スネア中央から左右に2cm程度ずつ離れた所だけ、コーティングがはげているという状態。

音色も「ピンポン球が壁から跳ね返る時のような」という、マーチングの理想の音そのもので、とにかく綺麗。

しかも、スネアの上端と中央付近の音色の違いを利用して、たった一台のスネアの上で、見事なまでに音色を操る。

そして、なにしろ素晴らしいのが、ダブルストローク。ここまで完璧に音量や音色が揃ったダブルは、この人以外では、聴いた事がありません。

バディ・リッチのシングルストロークと同じで、「基本を極めると、とんでもない事になる」というヤツですね。

さらには、スティックエンドを使って叩く、マーチングでお馴染みの「バックスティッキング」という奏法も、この人は「違う音色のアクセント」として使っているんです!

さらにさらに! スネアヘッドのセレクトが素晴らしく、「スネアだけは、やっぱりコーテッドじゃなきゃ…」という僕の思い込みを、簡単に、かつ完璧に、ぶち壊してくれました。

う〜ん…、まだまだ書きたい事は、山ほどあるのですが、もう長くなりすぎるので、この辺にしておきましょう(苦笑)。

バディ・リッチが「型破りで自由自在なスティックワーク」の天才なら、ダニー・レイモンドは「極限まで研ぎ澄まされたスティックワーク」の達人でしょう。

方向性は違いますが、どちらも手の技術の頂点ですから、ドラマーならば、絶対に見ておくべきものです。




*5 門外漢が言うべき事ではないかも知れませんが、現在のDCI系は「競技」的な方向に走り過ぎ、音楽面がおろそかになっていると感じます。



古典的モーラー奏法について
 ダニー・レイモンドの奏法は、『モーラーブック』そのものの左手のグリップや、右手が「回外」の形で振り上げられている事などから、「古典的モーラー奏法」の流れに属するものと考えられます。
注:ジム・チェイピンの奏法は「チェイピン式モダン・モーラー」とでも言うべきもので古典的モーラーではありません
 ドラムコー方面には、グラッドストーン系の人が多い(石川直氏なんかは典型)と感じていたのですが、「マーチングでも、やはり最後は、モーラーになるのか」と…。
 しかも、スティーヴ・ガッドや、ジョー・ポーカロ(ジェフの父)も、腕の振り上げ方がダニー・レイモンドとそっくりなので、同じ系統(古典的モーラー系?)の先生に、ルーディメンツを教わったと考えられます。
 欧米圏のドラマー達には、マーチングを通してモーラー系の奏法を(ほとんどの場合、それを「モーラー奏法」とは知らずに)身に付けている人が少なくないのでは?



スティックトリックについて
 ダニー・レイモンドのDVDを見るまでは「スティックトリックなんて無意味」と思っていた僕ですが、この人の「スティックトリック解説」を見ているうちに、「スティックトリック練習によって鍛えられた精密な手のコントロール」が、演奏の凄さと無関係ではない事に気が付き、今では、スティックトリックを練習メニューに取り入れようと、真剣に考え始めています(笑)。


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