そして、他の二人を圧倒してしまったドラムソロ合戦。テクニカルな面では、グレッグ・ビソネットの方がはるかに練習を積んでて、難しい事をいっぱいやってるんですけど、迫力とハッタリだけでぶっ飛ばしてしまったという感じですよね。
「お題」が手足のコンビネーション・フレーズ(?)になったとき、片手片足だけで返したのなんか、ハッタリ以外の何物でもないんですが。(よく聴けば、音はドシャメシャ…)
さらによく見てみれば、何ヶ所かあるユニゾン部分も、デニチェンだけイイカゲンになってたりしてね(笑)。
それでも、練習台を叩きすぎたのか、グレッグ・ビソネットの音が鳴ってなかったのと、さすがに老いたルイ・ベルソンでは、荒ぶるデニチェンの迫力には、とうていかないませんでした。
その後、ジョン・スコフィールドと一緒に作った自身の教則ビデオでは、さらにレベルアップして、シングルストロークなんか「ブーン」「ブォーン」と、ハチの羽音みたいな感じになってて、もう、笑うしかなかったですね。
ただ、それ以降追いかけて来て、どうもワンパターンが過ぎる感じで、ドラムソロの最後に、タオルで顔拭いたり、水を飲んだり、時計を見たりするのも、毎回のようにやってるらしいと知ると、さすがに冷めて来てしまいましたが(苦笑)。
なんにしても、洗練されていくにつれて野性味を失ってしまった「ドラミング」の世界に、単純なパワーやスピードの「カッコよさ」を再認識させた意義は大きいと思います。
あのスティーブ・ガッドもデニチェンを見てツイン・ペダルを導入したらしいですし、デイブ・ウェックルもソロアルバム2作目は露骨にデニチェンを意識した感じになってましたからね。
そうそう、忘れちゃいけないのが、デニチェンはグルーヴも良いって事。ハービー・メイスン程の「バネ」や「切れ」、良い時のオマー・ハキム程の「うねり」は感じませんが、シンプルなグルーヴプレイだけでも充分以上に気持ち良いですからね。
願わくば、本家マイク・タイソンのように短命で終わらず、長く活躍して欲しいものです。 |