デニチェンの18番の中でも、見た目のインパクトが最大なのは、あの豪快な超高速クロススティッキングでしょう。
なにしろ速い! 腕とスティックが、まるでプロペラ(*1)で、局所的につむじ風が発生していそうです(笑)。
速すぎて、どう移動して、どうクロスしているか、全然分からなかったのですが、何度も何度もビデオをコマ送りして、ようやくやり方が分かったので、動画にしてみました。
|
*1 古すぎですが、僕は『巨人の星』に出て来た、オズマの「見えないスイング」を思い出しました。たぶん、同世代の方には共感頂けるのではないかと(^^;
|
デニチェン本人は、さらにもう一段階上の速さで、しかもずっとパワフルにやってますから、やはり「化け物」ですね。
とはいえ、フレーズ自体は比較的シンプルで、特に、移動範囲が、スネアに一番近いタムとフロアを使っているだけだったのは意外でした。これなら、どんなセットでも可能でしょう。
ただし本人は、この形を基本にして、前半8拍だけを繰り返したり、12拍目の左手がタムではなくスネアに行く事もあり、8拍なら6連、12拍なら32分に当てはめる等、多くのバリエーションを持っていて、自由に使い分けているようです。
決して難しいフレーズではないのですが、速く、スムーズに出来るようになるまでには、それなりに練習を積む必要があり、まして、曲中で自由に使いこなせる所まで行くには、かなりの時間がかかる事は間違いありません。
まあ、世界的トップドラマーのフレーズなんですから、そうそう簡単にはコピー出来るはずがないですよね(^^;。
僕自身、今回チャレンジしてみて、ついに本人のスピードには届かなかった事で、改めてデニチェンの凄さを実感しました。
|
☆余談:クロススティッキングの裏話
そもそもは、ジーン・クルーパ等の初期のジャズドラマー達が、ドラムソロ中のショーアップの要素として始めた事は、ほぼ間違いないでしょう。
そして、スティーブ・ガッドの登場により、いったんは葬りさられる事になります。ガッドは、「パラディドル等の手順を使って、極力スティックをクロスさせない」アプローチを取っていたからです。
それは“ガッドの遺伝子を引き継いだ”ドラマー達(カリウタやウェックル等)も同じで、長い間、クロススティッキングは「忘れられたテクニック」となっていました。
デニチェンは、それを「超高速」にする事で、再び復活させたわけですが、これは逆に言うと「バディ・リッチのスタイルを引き継いだ」とも言えるのです。
事実、バディ・リッチのクロススティッキングは、デニチェンのを見慣れた目で見ても見事であり、色あせてはいません。
|