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★ それは「基本」ではありません (ある程度経験のある方向けです)

何ごとも「基本」が大切

「基本」なくして応用はなし

迷ったら「基本」に戻れ


…等々

「基本」という言葉は、しょっちゅう使われます。

でも、セットドラミングの世界では、多くのアマチュアドラマーの人達が考えている「基本」が、かなり「的外れ」なものになってしまっていると、言わざるをえません。

特に気になるのは、「クラシックスネアドラミング」や「マーチングスネアドラミング」における「基本」が、そのまま、セットドラミングの基本だと、何の疑いもなく話している人達があまりに多いという事です。



「持ち方」や「振り方」は、セットドラミングの基本ではありません。


ドラミングの基本が、スティックのグリップ(持ち方)やストローク(振り方)だと思っている人が、本当に多い…というより、みんなそう思ってるみたいですが、それはちょっと違います。

確かに、クラシックスネアドラミングや、マーチングスネアドラミングの場合は、そう考えても、あまり問題はないでしょう。

でも、セットドラミングの場合は、ポップス・ロック・ジャズ・ラテン等々、各ジャンルごとに、求められる音色や音量が、全く違います。

楽器そのものや、スティックの選択も違いますし、チューニングも違うので、ヘッドの張力も違います。当然、それぞれに適したグリップやストロークも違って来ます。

仮にジャンルを限定したとしても、セットドラミングにおけるグリップやストロークは、本来、叩く楽器や意図する音色・音量等によって、柔軟に変化していくべきものです。

例えば、ライドシンバルを刻むためのグリップやストロークと、スネアで2拍4拍のバックビートを入れる時に適したグリップやストロークは、全く違います。

ですから、うちの教室では、持ち方や振り方について、最初の内は、ほとんど何も言いません。それらは、基本的なリズムを練習しながら、だんだん覚えて行けば良い事だからです。

それに、事実として「生まれて初めてドラムに触る人」に、「スティックを持って下さい」と言って、どうしても修正が必要な持ち方をしてしまう人など、今までに1人もいませんでした。(*1)

むしろ、長く叩いて来た人ほど、修正が必要な場合が多いのが現実です。


*1 特に、小学生以下の子供の場合、何も言わなくても、最初から、不思議なほど、理想的な持ち方をします。



セットドラミングの第一の基本とは?


では、今日からドラムを始めるという人が、いちばん最初に知るべき「基本事項」は何でしょうか? それは、間違いなくイスの高さの決め方と、座り方、座り位置」です。

これこそ、「立奏」が基本の、クラシックスネアドラミングやマーチングスネアドラミングと根本的に違う点であり、それゆえに、グリップやストロークなんかより、ずっと重要です。

なぜなら、イス(または、それに代わるもの)に座らない限り、両足を使ってバスドラムやハイハットのペダルを操作する「セットドラミング」を行なう事は不可能だからです。

そんなわけで、うちの教室で1番最初にやるレッスン内容は、イスの高さや座り方、座り位置について知る事です。
(※体験レッスンでもやっています)

ここでは、イスの高さの出し方だけ書いておきますので、今まで気にしてなかった人も、ぜひ参考にして下さい。

ドラムイスのセッティングには、おおまかに分けて「高いイス」と「低いイス」の2種類がありますが、ポップス、ロック系の場合は「低いイスの高い位置」が最も無難です。

やり方は簡単、「ヒザ小僧(ヒザのお皿)の“上”の位置に、ドラムイスの座面の高さを合わせる」だけです。

イスの高さの決め方

セットドラミングの第二の基本とは?


イスの事が分かったら、次に覚えるのは、楽器の配置、セッティングの基本です。

タムやシンバル類はともかく、リズムを刻む要となるバスドラムやスネアドラム、ハイハットのセッティングの基本ぐらいは、早い段階で知っておくべきです。

ですから、うちの教室では、イスの座り方の次に、バスドラやスネア、ハイハットのセッティングの仕方をやっています。
(※体験レッスンでもやっています)

もちろん、どんなセッティング状態でも、ある程度のレベルで演奏出来るようにしておくべきですが、それも、セッティングの基本が分かった上での事です。

ここでは、スネアの高さの出し方だけ書いておきますので、参考にして下さい。

スネアドラムの打面の高さは、座った自分の、太ももの付け根(太ももが胴体に繋がる場所)より上、骨盤の、横の出っ張りの頂点より下の範囲内になるようにします。

その範囲内で、ロック系の場合は低め、フュージョン等の、細かくて繊細な音符を多用する場合は高めにします。

スネアの高さ基準

セットドラミングの第三の基本とは?


セッティングの次に知るべき事は、ドラムセット内の各楽器が、どんな音色なのかを知って、それを「覚える」事です。

少なくとも、バスドラム,スネアドラム,ハイハットシンバル,タムタム類,ライドシンバル,クラッシュシンバルという、6種類の楽器の音色を覚える必要があります。

なぜ、音色を覚える事が「基本」なのかといえば、各楽器の音色を聴き分けられれば、曲を聴いて、どんな風にドラムを叩いているのか、おおよそ分かるようになるからです。

もちろん、初心者がいきなり、複雑なフレーズを、全部聴き取れるはずもありませんが、いわゆる「耳コピー」の最初の段階が、ここから始まるのです。

それだけでなく、各楽器の音色をしっかり記憶できていれば、手足を動かさなくても、頭の中でドラムの演奏を精密にイメージする事が出来るようになります。

これが出来れば、ドラムセットが無くても「イメージ練習」をする事が可能になります。

ドラムというと、とかく「手足を動かす」という風に、スポーツ的な方向で考えられがちですが、フレーズを「イメージ」して「歌える」ようにする方が、ずっと重要です。(*2)

イメージが出来ていないのに、いきなり手足を動かそうとしても、手足は思うように動いてくれず、非常に効率の悪い練習しか出来ません。

ドラムセットがない状態でも、精密にドラミングをイメージできるなら、手足は意外に動いてくれるものです。


*2 譜面を使う場合でも、ドラムの譜面は、他の楽器と違い、音階の変わりに「使用する楽器」を書くようになっていますから、各楽器の音色が分かってさえいれば、譜面を見て、即座にドラムのフレーズを思い浮かべる事が出来ます。




セットドラミングの第四の基本とは?


「音楽と合わせて、ずれずに叩く方法を覚える」事です。

セットドラミングの第一の目的は、なんといっても、リズムキープ、タイムキーピングですからね。

事実、演奏の仕事をメインにしているプロドラマーなら、まず例外なく、これだけは実用上問題のないレベルでマスターしています。(じゃないと仕事になりません(^^;)

ところが恐ろしい事に、昔の僕を含めて、大多数のアマチュアドラマーは、これがまったく出来ていません。

どんなに手足が動いて複雑な事が出来ようと、どんなに速い音符が叩けようと、タイムキーピングがダメなドラマーは、ドラマーとしては失格です。

そして、タイムキーピングのための第一歩は、実は「聴き方」にあるんです。(よく考えれば当たり前なんですが…)

うちの教室では、初めてドラムに触る人には、イスの座り方と簡単なセッティングの説明をした後、いきなり、曲と合わせて最も簡単な8ビートを叩くレッスンを行っています。

すると、ほとんどの生徒さんが、30分程度で「聴き方」をマスターし、楽曲と合わせて叩く事が出来てしまいます。

そして驚く事に、それ以降ずっと、その生徒さんは、メトロノームと一緒に叩く事に、全く苦労しないのです。



曲と一緒に叩いても、まず、ずれる事はありませんし、万が一ずれても、即座に正確なタイムに復帰出来ます。(*3)

ところが、練習の際に「ドラムだけ」を叩いて来たような人は、この「聴き方」が、まったく出来ていないのです。

結果、何年も叩いていて、長くバンドもやっているのに、メトロノームや楽曲と一緒に叩くと、大きくずれてしまうという人が少なくありません。

これは、大変にもったいない事だと思いますので、聴き方の基本部分だけを書いておきます。参考にして下さい。

メトロノームは、4分音符だけでなく、8分や16分音符も小さく鳴らして、それを「自分が叩いているハイハット」のように聴きながら、キックだけ、スネアだけ…と、一箇所ずつ演奏して、きっちりタイムを合わせて行きます。

楽曲の場合は、曲中でドラマーが叩いているハイハットを、自分が叩いているつもりで聴きながら、キックだけ、スネアだけ…と合わせて行き、それがバッチリ出来るようになってから、全部を合わせて叩くのです。



*3 曲中のドラムまたはメトロノームの音と、叩いたドラムの音が「人間の聴感上
同時に鳴っていると感じる」(フラムにすらならない)状態を「正確なタイム」と定義


セットドラミングの第五の基本とは?


意外に思われるかも知れませんが、「靴の選択」ですね。

もちろん、ある程度ドラミングに慣れれば、どんな靴でも、実用上問題ないレベルの演奏は出来るんですが、靴に関しては、良かれと思って、ドラミングに向いていない靴を使用している人が多いです。

たとえば、底のゴムが厚くてクッションが効いた「足に優しい」スニーカーは、ドラミングには向いていません。

その「クッション」が、キックペダルを踏む際に、パワーが落ちる原因になるからです。(パワーを求めないならOKです)

同じ理由で、たいていの「ランニング用」の靴も、ドラミングには向きません。いや、ほとんどの「スポーツ・シューズ」は、ドラミングには向いていないと言って良いでしょう。

実例として、ある生徒さんが「フットサル用の靴」を持って来た事がありますが、非常に滑りにくく作られているせいで、キックペダルが踏みづらくなって逆効果でした。



逆に、意外に使えるのが「革靴」です。なぜって、大昔のジャズドラマーは、皆、革靴で演奏していたわけで、つまり、キックペダルは本来、革靴で踏む事を前提に設計されていた(*4)からです。(特に、靴底まで革のヤツは良い)

革靴だと「ヒールダウン奏法」が非常にやりやすく、なぜ、昔のジャズドラマー達が「ヒールダウン」をメインの奏法としていたのかが、すごく良く理解できます。

それと、底が硬いので、意外に凄いパワーが出ます。

ジェフ・ポーカロやコージー・パウエル等、カウボーイブーツ等を愛用していたドラマーは少なくないですが、底が硬くて、滑るクツは、意外にドラミングに向いているんです。

ただし、底が硬いと、ペダルボードに当たる音が、どうしても大きくなりますので、オンマイク、デジタルが主流の、現代のレコーディング事情には向きません。

レコーディングの事まで考えるなら、底が平らで薄く、硬めで、ある程度滑る、街歩き用のシンプルなスニーカーが、最もドラミングに向いていると考えます。

そうそう、家にドラムが置ける人の多くは、裸足や、靴下でペダルを踏んでいると思いますが、一度、底の硬い靴で踏んでみる事をオススメします。

今まで、いかにバスドラムでパワーを損していたかが、良く分かると思いますよ。パワーより、繊細なタッチを求めるなら、裸足もありですけどね。





*4 ただし、DW9000やアクシスに代表されるような現代のフットペダルは、スニーカー等の「ゴム底の靴」を前提に設計されています。特に、ペダルボードの表面に凹凸がほとんど無いものは、完全に、ゴム底のスニーカーを想定して設計されていると思って間違いありません。
 そういうペダルには、革靴は向きません。つまり、靴の選択は、ペダルによっても変わってくるわけです。


セットドラミングの第六の基本とは?


ここでようやく「ペダルの踏み方」が出て来るのですが、特に、8ビート系のポップス・ロックにおいては、キックペダルの扱いを覚える事は、手の技術よりも、ずっと重要です。

そして、残念ながら、スティックの持ち方と違って、生まれて初めてドラムに触って、いきなり適切なペダルの踏み方が出来る人は、ごくまれにしかいません。

また、初心者の方が、一回だけのレッスンでマスターするのは無理ですが、ほとんどの生徒さんは、4〜5回目のレッスンまでに、踏み方の基本を身に付けてしまいます。

そして同時に、その頃には、ゆっくりしたテンポのシンプルな8ビートの曲なら、もう立派にタイムキープをしながら叩けるようになっているのです。



セットドラミングの第七の基本とは?


はい、お待たせしました。ここでようやく「スティックの持ち方」や「振り方」が出てきます。

でも、最初に書いたように、持ち方や振り方は、一つではありません。ジャンルによって、音量によって、曲調によって、求める音色によって、柔軟に変化すべきものです。

生徒さんの多くが、「“正しい持ち方”や“振り方”を教えて欲しい」と言いますが、状況が変われば「何が正しいか」自体が変わるのですから、持ち方や振り方は「基本」とは言い難く、むしろ「応用」の方に入ってしまうわけです。

ちなみに、「姿勢」や「スティックの軌道」を気にする人も非常に多いですが、経験的に、これらに関しては、ほとんど気にする必要はないと言えます。

むしろ、「姿勢を良くしなければ…」と思って胴体を硬くしたり、「スティックの軌道は真っ直ぐでなければ…」と思って腕を硬くしたりする方が、ずっと悪いことです。



最後に


「ずっと独学でやって来たが、限界を感じた。悪い癖がついていると思うので、グリップやストロークの基本からやり直したい」という方を、今までに何十人も見てきました。

でも、その人達の中に、本当にグリップやストロークに問題のある人は、ほとんどいませんでした。

むしろ、問題の大部分は、それ以前の基本である、イスの座り方やセッティング、靴の選択や、タイムキープのための聴き方が出来ていない所にあったのです。

残念ながら、現在(2010年秋)は、教則本やDVD等でも、それらの重要性に触れているものは、ほとんど無いので、気にしていない人の方が圧倒的に多いでしょう。

この文章が、そんな現状を、少しでも変えるきっかけになったなら、幸いです。



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