まず大切なことは、どう持つかより、どこを持つかです。
なぜ「スティック(エンド側)の1/3〜1/4」を持つのか、一般的な「正しい持ち方」には、その「理由」が欠落しています。
「1/3〜1/4の場所」には、スティックが最も良く弾む場所である、バウンスポイントがあるという事実を知ることは、とてつもなく重要だと思うのですが・・・。(*1)
次に大切な事は、最小限の力で持つという事です。
人差し指と親指の2本で・・・と聞くと、大部分の初心者は 「スティックを落としてはいけない」と思って、必要以上にしっかり持ってしまいます。
ここが大問題で、しっかり持とうとして、指に力を入れると、手首が固まってしまうのです。(*2)
手首が固まってしまっては、柔らかなストロークは不可能となり、スムーズな演奏は出来ません。
したがって、今回の動画では、力んでしまいやすい通常の方法ではなく、力みにくい「小指をスティックに軽く巻きつける」ところから、スティックをホールドして行きます。
こうする事で、よく言われている「親指と人差し指の間に空間ができるように」というのも、自然に実現されます。
指とスティックの触れる場所は、人差し指〜小指の4本は、基本的に、第一関節(最も指先に近い関節)の「へこみ」の部分です。
これは、指のへこみにスティックが「ハマる」事で、より小さな力でスティックが持てるようになるからです。(*3)
それから、グリップには「手のひら」も使うという点を忘れないで下さい。
指だけでスティックを持とうとして、余分な力を使ってしまっている例を、非常によく見かけます。
打面を連打している時は、手のひらとスティックは離れますが、スティックが空中で止まっている時は、ほぼ100%、手のひらも使うと考えて下さい。
さて、「基本」があれば、常に「応用」があるわけで、グリップに関しては、基本よりも、そのバリエーションを、どう使いこなして音楽を実現していくかの方が、ずっと大切です。
まず知らなければいけない事は、グリップの支点は親指側だけでなく、小指側に持ってくる事も可能ということです。
親指側支点と小指側支点を使い分ければ、スティックを長く持ったり、短く持ったりするのと同じ効果が得られます。
そして、小指側支点の代表が「古典モーラー奏法」です。
大切なのに意外に知られていない事ですが、『モーラーブック』でも紹介されているように、本来、モーラー奏法というのは、小指側支点のグリップに適した奏法なのです。(*4)
事実として、「モーラートリプレットに挑戦したが上手くいかなかった」という、中級レベルの人に、小指支点で再挑戦してもらうと、10分以内で皆成功しているのを見て来ています。
最後の、フレンチグリップの指によるストロークと、トニー・ウイリアムス式の小指側を固定したグリップによる、ライドシンバルの音色比較は、あくまでも「参考例」ですが、ハッキリ音色が変わっているのは分かると思います。
音楽表現には「音色変化」は絶対に不可欠であり、音色変化の鍵はグリップにあるのです。
グリップを固定し、打点も変えなければ、音色が変化するはずはなく、「下手な打ち込み」のようなもので、表現も魅力も出るわけがありません。
「音楽表現の出来ないグリップ」は、どんなに形が美しかろうと、とうてい、正しいグリップなどとは言えません。
逆に言えば、「狙い通りの音」が得られているなら、どんなに「変な持ち方」だろうと、それは「正しいグリップ」です。
音楽は「形」を扱う世界ではなく「音の変化」で表現をする世界ですから、形に拘って、肝心な音が死んでいたら、何の意味もありません。
「正しいグリップ」は、求める音の数だけあるのです。
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