StudioLite
レッスンについて
デモ演奏動画
予約状況表
エッセイ・研究
ご予約・お問合せ
リンク


メニューに戻る
★ マイ・フェイバリット・ドラマー:1970年代のイアン・ペイス


僕がドラムで初めて演奏した「曲」は、ディープ・パープルの『スモーク・オン・ザ・ウォーター』と『ハイウェイ・スター』でした。もちろん、まともにコピー出来てたわけもなく、かなり、イイカゲンなものでしたけどね(苦笑)。

それでも、よく「三つ子の魂百まで」と言われるように、僕がこの人から受けた影響は大変に大きくて、左利き用の逆のセッティングを始めとして、今や自分の手癖になっているフレーズの多くが、元はこの人のプレイだったりします。



ラディックのLM402を買ったのは、この人と同じ音が出したかったからですし、バズロールを必死に練習したのも、『ライブ・イン・ジャパン』のドラムソロ(*1)に、ぶっ飛んだからでしたし。

なので、あまりにもジョン・ボーナムが評価され過ぎて、この人に対する評価が低くなりがちなのは、ちょっと気になります。

特に、某ドラム雑誌に書かれていた「ジョン・ボーナムのプレイやタイム感は、現代でも充分に通用するが、70年代当時のイアン・ペイスのプレイやタイム感は、現代では通用しない」(趣意)という意見は、酷すぎると思いました。

事実は、後世の多くのロックドラマー達が、ジョン・ボーナムのプレイやサウンドを真似していった結果として、現在の音楽があるから、今、ジョン・ボーナムを聴いても、違和感が無いというだけの事なんですから。

もちろん、それ自体が、ジョン・ボーナムの偉大さを証明しているわけですが、原因と結果を逆転させて、ジョン・ボーナムは時代を越えた天才で、イアン・ペイスは凡人…みたいな論理の持って行き方は、明らかに間違ってます。

この二人のドラマーに、そこまでの実力差はないですよ。




*1 半年後に、『マーシー・マーシー』を聴いて、ドラムソロの最後で、バズロールをやりながら、バスドラムをだんだん速くしていくのが、バディ・リッチのコピーだったと知ったわけですが、バディ・リッチのスピードが、イアン・ペイスを楽勝で上回ってるのには、本当に驚きました。イアン・ペイスだって、充分以上に速いのに…。


ぶっちゃけ、ボーナムの特徴的なプレイには、シンプルな物が多いから、真似しやすいけど、バディ・リッチの影響が強いペイス(*2)は、ハイ・スピードで手数が多いから、真似するのが大変という事情だってあるんですから(苦笑)。

それに、いくらジョン・ボーナムが偉大とは言っても、欠点が多いのも確かで、その、ボーナムが不得意な分野に、ことごとく優れているのが、イアン・ペイスだったりするんです。

たとえば、良い時はすごくタイトだけど、時に非常にルーズになったり、タイミングをハズす事も少なくないボーナムに対し、常にスムースで、安定したタイムをキープする、ペイス。

至極パワフルな音色が、時に、乱暴で汚い感じになる事もあるボーナムに対し、常に、粒立ちと歯切れが良く、特にシンバル類の音が繊細で、美しい音色の、ペイス。

重いグルーヴは絶品だけど、サンバを演っても重くなっちゃうボーナムに対し、抜群のスピード感と、絶妙なタメを両立させた、弾力のあるグルーヴを持った、ペイス。

インパクトは抜群だけど、時に野暮ったくなる事もあるボーナムに対し、高速テンポの歌のバックで、ドラムソロの連続みたいなプレイ(例:『BURN』『ファイアーボール』等)をしても、スマートに聴かせてしまう、センスの良い、ペイス。




*2 他にも、ミッチ・ミッチェルや、カール・パーマー等、バディ・リッチの影響が強いと感じるドラマーは少なくないですが、フレーズだけでなく、タイム感やセンスまで含めて、ロック・ドラマーの中では、最もバディ・リッチの影響が強い人だと思います。


ほら、こうやって書くと、ジョン・ボーナムよりも、イアン・ペイスの方が、ずっと優れたドラマーみたいに思えてくるでしょ?(笑)

イアン・ペイスのドラミングって、センスが良くてスマートで、これといった欠点が見当たらない上に、とんでもないハイテクニックが、さりげなく入って来るのが、凄いんです。

よく、「手が速い」と言われるけど、キックだって、パワーはともかく、スピードは、ジョン・ボーナムを軽く上回りますからね。

昔、インタビュー記事でファイアーボールは片足でもプレイ出来るけど、パワーが落ちるから、隣のスタジオから、キース・ムーンのバスドラムを借りて、ツーバスで録音した」というのを読んだ時は、マジで、ひっくり返りましたよ。

だって、ファイアーボールはBPM≒240ですよ。で、少なくともイントロの8小節は、キックを8分で踏みっぱなし…。それを片足でも行けるって??!!

普通は、240BPMの8分を片手で8小節刻むのだって、相当大変…というか、プロドラマーだって、出来ない人が少なくないんじゃないですか?

それに、「キース・ムーンのバスドラムを借りて…」っていうのも、ちょっと信じられません。『ファイアーボール』のツーバスって、ものすごく音が揃ってて、左右の音量や音質の差が殆ど無いんですもん。

ツーバスのプレイって、普段ワンバスのドラマーが、いきなり他人のバスドラム借りて、すぐに上手く行くもんじゃないですよ(苦笑)。やっぱり、タダもんじゃないです。

ちなみに、これまたバディ・リッチゆずりなのか、イアン・ペイスって、スタジオ盤より、ライブの方が良いプレイが多いんです。というより、ディープ・パープル自体、ライブの方が、断然、凄い演奏になりますからね。



特に、『ハイウェイ・スター』『スモーク・オン・ザ・ウォーター』『バーン』の3曲は、スタジオ盤しか知らない方には、ぜひ、『ライブ・イン・ジャパン』(*3)と『メイド・イン・ヨーロッパ』を手に入れて、ライブ演奏を聴くことをオススメします。

ライブ盤を聴いた後じゃあ、スタジオ盤の演奏は、ショボくて聴けなくなると思います。そのぐらい、違います。

ライブといえば、<カリフォルニア・ジャム>で、初めて映像を観た時も、ぶっ飛びました。特に『ユー・フール・ノー・ワン』には、完全にノックアウトされました。




*3 初めて『ライブ・イン・ジャパン』を買う方には、オリジナル盤か、リマスター盤がオススメ。『完全版』はマニア向けです。


イアン・ペイス 『ユー・フール・ノー・ワン』での驚異のプレイ例 (CD『メイド・イン・ヨーロッパ』より、筆者の耳コピー)
You Fool No One YouTubeに動画がアップされてました。0:17〜0:29で「驚異のクラッシュ・ミュート」を2回やってます。ぜひ見て!


ツェッペリンの『移民の歌』よりはるかに速い、BPM≒145なのに、このキックとカウベルを、延々刻み続けながら、空いた右手(*4)で、スネアやタムに遊びを入れるんですよ。さすがに、キックだけは時々手(足)を抜いてますけどね。

何より恐ろしいのが、クラッシュを叩いた直後の右手(*4)でのミュート。このテンポと手数の中でやるには、あまりにも難度が高すぎる。だから、絶対、わざとやってるんですよ(笑)。「真似出来るもんならやってみな?」ってね。

いまだ現役で活躍してますが、さすがに、昔ほどキレのあるプレイは聴けなくなって来てるので、最近のイアン・ペイスしか知らない人には、ぜひ、全盛期=70年代の、ライブでのプレイを聴いてみて欲しいです。







*4 イアン・ペイスは左利きで、左右逆のセットなので、この場合の右手は、普通の人の左手です。お間違い無きよう。


メニューに戻る


HOME  Lesson  Demo  Schedule  Essay  Contact  Link  YouTube  facebook  Twitter  SoundCloud  Instagram

copyright© 2005 StudioLite. All rights reserved.