しかも、作曲に慣れて来て、複雑なコードを使ったりし始めると、マイナーの方が色々と可能性が高くて「作り甲斐」がある。そういう事が分かって来たんです。
これは何とかしなくちゃ…と思って、つとめてマイナーの曲を聴いたりと、努力を始めましたが、なかなか難しかったですね。嫌い…それも、ほとんど生理的に受け付けなかったものを好きになるなんて、そうそう出来るものじゃありません。
それでも、僕がマイナー嫌いを克服出来たのは、「ブルース」と「レッド・ツェッペリン」のお陰だったと思います。
僕が一緒に演って来たメンバー達には、アドリブ・セッションをやるのが好きな奴が多くて、3コードで、リズムだけ変えて3時間とか、そういうのを平気でやるわけです。
で、3コードといえばブルース、使う音階は「ブルーノート」です。これの面白い所は、たとえキーがメジャーでも、3度の音がフラットするという事です。
仲間とセッションを繰り返しているうちに、3度がフラットする状態に慣れることができたんでしょう。そして、まず「ブルースが好き」になった。
それと僕は「風変わり」というか「ちょっとヒネくれた」音楽が好きなので、当時よくコピーしたバンドの中なら、整然としてポップなディープパープルより、ブルース色が強くてクセのあるツェッペリンの方に、より強く惹かれてました。
で、20代後半頃から、ツェッペリンのアルバムを1枚ずつ買っていったんです。そして、買うたびに、毎日ヘビーローテーションで聴くようになって…。
とはいえ、マイナー色が特に強い「アキレス最後の戦い」なんかは、やっぱり苦手で、最初のうちは、途中でスキップしてましたけどね(苦笑)。
それでも、ほとんど毎日、ツェッペリンばかりを聴く日々が、数年間も続きました。
中でも一番聴きまくったのは、2枚組みの『フィジカル・グラフィティ』だったと思いますが、1枚目1曲目の「カスタード・パイ」で目覚め、1枚目が終わったら2枚目をCDプレイヤーにセットして…という事をくりかえしていました。
そしてやがて、2枚目1曲目の「イン・ザ・ライト」にハマッた。この曲も、典型的なマイナーではなく、サビではメジャーに転調する「救い系」の曲ですけど、もう、プレイヤーを「1曲リピートモード」にして、延々何時間も。
すると、最初のうちは、前半の陰鬱なマイナー・パートで溜まったストレスを、サビの「救い」パートで発散して快感を得る…という聴き方だったのが、いつしか、前半の陰鬱パート自体が気持ち良くなって来たんですよ。
つまり、ベルを鳴らしてから犬に餌をやるのを繰り返すと、やがて犬は、ベルの音を聞いただけでヨダレを垂らすようになる…のと同じ「条件反射」ですね(笑)。
しかも、「イン・ザ・ライト」冒頭からボーカル入ってすぐのバックには、マイナーの「ラシドレミファソラ」を変形したような音階が繰り返されていて、それが、聴くたびに「快感を約束するフレーズ」として、脳に刷り込まれて行くわけです。
こうして、ようやく僕は、30年も苦しんだ「マイナー嫌い」から解放され、より多くの音楽を楽しめるようになったのです。
いや〜『ホテル・カリフォルニア』は、やっぱり名曲でした。エンディングの「泣きのツインギター」なんか、ホントに、たまらなく良いですよね。やっと分かりましたよ(笑)。
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