StudioLite
レッスンについて
デモ演奏動画
予約状況表
エッセイ・研究
ご予約・お問合せ
リンク


メニューに戻る
★ オープンハンドについて


「オープンハンド(手をクロスしない)によるハイハット演奏は、クロスハンドより有利だ。そもそも、手を交差するなんて不自然で、不合理だ。」というような意見を、あちこちで見かけます。

この意見には、どうも賛同できないんです(^^;。

なぜって、ドラムを始めてすぐにオープンハンドに興味を持ち、オープンハンドで演奏出来る僕自身、クロスハンドより、オープンハンドが有利とは思えないからです。(※)

なので、「オープンハンドに興味がある」という方には、ぜひ、僕が「若気のいたり」でオープンハンドに手を出した、20年以上に渡る「苦い経験談」を、お読み頂きたいのです。








短いですが、こちらの動画でオープンハンドを演ってます。興味のある方、疑い深い方(笑)はどうぞ。


もともと左利きだった僕は、20歳前後までは主に左利きのセッティング(左右逆)で叩いてました(*1)が、その頃から、格好つけて一部をオープンハンドで演奏する事がありました。

当時、ビリー・コブハムやサイモン・フィリップスの存在を知って、オープンハンドのスタイルがカッコイイと思いましたし、なにしろ「皆と同じ」というのが嫌いでしたからね(苦笑)。

そして、右利きのセットを使う機会が増えるにつれ、スピードや持久力を補うためにもオープンハンドで演奏する事が多くなり、オープンハンドがトレードマークだった時期もあります。

もちろん現在でも、オープンハンドの演奏は可能で、右利き用のセットでも、左利き用のセットでも、どちらでも出来ます。

でも、たとえ出来ても、実際に使うことは滅多にありません。オープンハンドでの演奏には不便を感じることの方が多く、クロスハンドの方がずっと演奏しやすいからです。



*1 そもそも、箸や鉛筆を右手で使っていた僕は、ドラムを始めて「クロスハンドがどうにもやりにくく、オープンハンドの方が楽」だったのと「フィルインで、つい左手スタートになってしまう」ことから、自分が左利きだと初めて気づいたのです(^^;。

ちなみに、ドラムセッティングの遍歴は…
1.右セットオープンハンド(初心者時)
2.左セットクロスハンド(〜歴2年位)
3.左セット1部オープンハンド(〜5年)
4.左セット右セットを併用(〜10年)
 (右セットの時はオープンハンド)
5.右セット1部オープンハンド(近年)
6.右セットで99%がクロスハンド(最近)
7.右利きの方のレッスン時は左セットで
 左利きの生徒さんの時には右セット。
 (※どちらのセットでもクロスハンド
 …という段階を経て来ています。


オープンハンドは、実際にやってみると「思っていたほど良いものじゃなかった」というのが、僕の正直な感想です。

ぶっちゃけ、もし、オープンハンドがそんなに有利で合理的なのであれば、世界のトップドラマー達のほとんどが、すでに採用しているはずだと思いませんか?(^^;;;

少なくとも、ビリー・コブハム以降の世代からはオープンハンド・スタイルの人がもっと沢山出て来て良いはずで、気が付けばトップドラマーの半数以上がオープンハンド…という状態になっているのが当然ではないでしょうか?

だって、彼らは皆、両手を、ほぼ同等に使えるレベルの達人なんですから、オープンハンドにスタイルを変えることに、たいして障害なんか無いわけで…。

なのに、実際にはオープンハンドのトップドラマーは大変少ないのはなぜか? それは、オープンハンドがクロスハンドより有利だと思った人が少なかったからでしょう。

これはまず間違いなく、彼らは試してみた上で、オープンハンドではなく、クロスハンドを通常のスタイルにする方が有利だと判断したはずなんです。(根拠は後述)

そして、結論を言ってしまえば、どんなドラマーにも有効なのは、通常はクロスハンドで演奏し、必要に応じてオープンハンドに切り替える方法だと思います。



つまり、デニス・チェンバースのスタイル(*2)です。いやいや「一部だけオープンハンド」なら、ガッド・カリウタ・ウェックルをはじめとして、実際に使ってる人が沢山いるじゃないですか。


*2 教則ビデオで「ビリー・コブハムを見てオープンハンドを始めたけど、格好をつけて…と言われてやめた」と言ってますね。


そして、デニチェンはマッチドグリップがメインだからオープンハンドを多用し、ガッド・カリウタ・ウェックル等はトラディショナル・グリップをメインにしているから、あまりオープンハンドを使わないんですよ。

なぜなら、オープンハンドを通常のスタイルにする場合の最大の欠点は、トラディショナル・グリップ(左手)の利点が使えなくなってしまうことだからです。

長くなるので詳しくは書きませんが、あの「逆手トラディショナル・グリップ」が出来るビリー・コブハムでさえ、実際の演奏では大部分がマッチド・グリップになりますからね…。


ちなみに、「オープンハンド推進論者」には「クロスハンドだと下になる手の振り幅が…」という人もいますが、デニチェンはクロスハンドでもバックビートのパワーは落ちませんよね。(*3)

では次に、実体験した人間の一人として、オープンハンドの不利な点を具体的に挙げてみますね。


*3 オープンハンドも多用するので、ハイハットとスネアの高低差が少なく、通常のクロスハンドよりもずっと振り幅が制限されてるのに、パワーが落ちませんよね?(^^;


まず、ハイハットを低い位置にセットする必要があるので、スネアとの高低差が利用できず、両手刻みの16ビートがやりづらいです。それに「片手8」と「両手16」が交互に登場する曲なんかだと手順が面倒になってストレスが溜まります。

たとえば、クロスハンドなら簡単なパターンが、オープンハンドにしただけで、いきなり難度の高いプレイに(↓楽譜参照)なってしまったりするんですよ(^^;。



オープンハンドだと、こんなパターンは大変!
oh8_16.gif
(上の手順は一例ですが、どんな手順にしても、クロスハンドより大変なのは変わりません)


それから、ハイハットをショットするスティックの角度が変えづらいために、ハイハットが平板な演奏になりがちです。

さらに、ライドも左側に置くと、ガッド的な「右手ライド・左手ハイハット」の演奏が大変やりにくくなってしまいます。

他にも、タメの効いたバックビートが難しいとか、強いキックがやりにくい等々、オープンハンドの不利な点は沢山あります。

事実、オープンハンドを常用しているドラマー達のプレイには、多少なりとも、これらの(オープンハンドの不利な点による)影響が出ていると思いますが、どうでしょう?

だから、どうしても僕は、オープンハンドをオススメする事が出来ないんです。左利きの方にも、不利な点が多いオープンハンドより、左右逆セッティングの方をオススメしますね。

また「左手を強く、あるいは速く動くようにしたい」からとオープンハンドの練習をするのもオススメ出来ません。かえって重心バランスを見失ってキックが下手になりかねないですから…。

動きにくい方の手を鍛える方法として、オープンハンドは決して最良の方法ではなく、特効薬でもありません。むしろ、副作用が多すぎて危険なんですよ…。

両手をバランス良く鍛える方法としては、ルーディメンツをみっちりやる方が、ずっと効果的で、安全だと思います。

それでも、どうしてもオープンハンドをやってみたいという方には、基本はクロスハンドのまま、ハイハットの高さも変えず、フレーズの一部にオープンハンドを使う方法から始めることをオススメします。

いずれにしても、ドラマーがクロスハンドでハイハットを演奏するのは、不自然でも不合理でもなく、それがナチュラルだからこそ皆そうやってきたんだという事です。(20年以上もかけて僕がオープンハンドから学んだことは、これだけかも(^^;;;)

「ルックス的にオープンハンドの方がカッコイイ」と思う人も少なくないようですが、よくよく見てみれば、クロスハンドの構えがキマッてるドラマーだって沢山いると思いませんか?



メニューに戻る


HOME  Lesson  Demo  Schedule  Essay  Contact  Link  YouTube  facebook  Twitter  SoundCloud  Instagram

copyright© 2005 StudioLite. All rights reserved.