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★ 使えるレギュラーグリップの作り方(中級者以上対象)


日本では、レギュラーグリップ(トラディショナルグリップ)は大変誤解されていて、その有用性が充分に理解されていません。

特に、習得の最初の段階で「必須の練習法」がある事が、ほとんど知られていません。

また、手首の角度やスティックの方向、薬指の使い方等に関しても、大部分の人が誤解しています。

「レギュラーグリップは使えない!」と切って捨ててしまう前に、正しい基本と習得方法を知って下さい。




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レギュラーグリップを始めるなら、まず、動画の前半で紹介している、親指と人差し指による「レギュラーグリップのフィンガーコントロール練習」を行う必要があります。(*1)

レギュラーグリップは通常のグリップより、はるかに指の役割が重要だからです。「指が動くようにならないと、使い物にならない」のです。

指の訓練には短くても1週間、通常は2週間〜1ヶ月程度が必要ですが、この段階を、キチンと通過したレギュラーグリップは、通常のグリップに劣るどころか、はるかに凌駕するポテンシャルを持ちます。(*2)

最初の注意点は、レギュラーグリップは、スティックのどこを支点にするかが、通常のグリップよりずっと重要という事。

スティックが最もよく弾む場所(バウンスポイント)を探し出し、親指の付け根の「水掻き状」の部分にスティックと手の皮が「広い面積で」当たるように乗せて下さい。(*3)

結果、スティックの向きは、よく誤解されている「腕に対して直角」ではなく、「腕から30度程度内側」になります。

次に、スティックを弾ませるのは、これまたよく誤解されている「親指の付け根付近」ではなく「親指の腹」です。

テコの原理で、支点から遠い場所を使ってスティックを動かした方が、ずっと楽に動かせるからです。(*4)

親指をマスターしたら、次は人差し指ですが、こちらは、親指より少しだけ難しいです。

まずは、手の平を下に向けて、人差し指のタッピングでスティックを弾ませますが、この時、やりづらいと感じたら、打面を思い切り高く(少なくともヘソより上に)してみて下さい。

レギュラーグリップ練習の初期段階では、打面をヒジよりも高い位置に設定すると、だいぶ楽になります。(*5)

また、手の平を下に向けたタッピングが、どうしてもやりづらい場合は、逆に、手の平を上に向けて、人差し指を丸く曲げ、指先を手の平の方向に動かしてタッピングしてみて下さい。
(※10人に1人位、こっちの方がやりやすいと言う人がいます)

そこから、通常の位置(「握手」の時の手)でも人差し指でタッピングが出来るようになれば、人差し指も完成です。親指と人差し指の「切り替え練習」に進みましょう。

一本ずつを、ちゃんとマスター出来た後なら、切り替えは難しくありませんが、この段階で大事なのは、手の平や指の脱力と、支点の摩擦を出来るだけ少なくする事です。(*6)

水掻き状の部分にスティックが「乗っているだけ」の状態に持って行って下さい。特に、人差し指だけの時は、親指を天井に向け、支点を完全に開放して下さい。

指の切り替えが、自由に、スムーズに出来るようになったら、人差し指の上に親指を重ね、下から薬指で支えてやれば、レギュラーグリップの完成です!(*7)

まずは、「人差し指の第一関節から先に親指の先端」を重ね、「薬指の爪の横」でスティックを支える「指を伸ばした位置」から始めてみて下さい。(*8)

ここまで来たら、後は実戦で使うだけですが、レギュラーグリップは、腕を上下に振る動きより、前腕の回内・回外の動きが基本になる事を忘れてはいけません。

そして実は、前腕の回内・回外だけでなく、上腕や肩までを含めた「腕全体の回転」と、レギュラーグリップを併用すると、通常のグリップのパワーなど軽く上回ってしまいます。

これが、筋力の弱い、利き手でない方の手で、このグリップを使う真の意味です。「不合理」どころか、弱い手を補うためにこそ、レギュラーグリップはあるのです。

事実、レギュラーグリップを始めた生徒さんは、2〜3ヵ月後には異口同音に「最近、マッチドより、レギュラーグリップの方が楽になっちゃいました」」と言います。

また、指の訓練の段階で、リバウンドの適切な使い方を学ぶため、グラッドストーン奏法が理解しやすく、回内・回外や上腕の回転が必須で、手指の脱力がしやすいので、モーラー奏法を理解する事も容易になります。

しかも、通常のグリップより、難度の高い動きが必要なため、
利き手と同じ練習量でも「より高い練習効果」が得られ、結果的に左右の手の差を無くす事が出来るのです。

その上、右手と左手の触覚神経から脳に戻る信号がまったく違うため、ルーディメンツやジャズ等の、左右の手を分離して使うアプローチの習得さえも容易になるのです。

さらに、打面に対するスティック角度の違いや、手を締めたり、ゆるめたりする事で、様々な音色が出るのを経験するため、音色表現に対する理解も進みます。

逆に言えば、グラッドストーンやモーラーの理解・習得が困難だったり、利き手でない手が弱かったり、音色の違いに目が向かない最大の原因は、マッチドグリップしか知らないからだと言っても過言ではないと、僕は思います。

初級レベルならともかく、中級以降の上達のためには、たとえ実際の演奏で使わないにしても、レギュラーグリップをマスターする事は、けっして無意味ではありません。

興味がある人はもちろん、中級以上で、もっと上達したいという人は、ぜひ、チャレンジしてみて下さい!





*1 むしろ、フィンガーコントロール練習法自体が、実はレギュラーグリップの基礎練習法を、通常のグリップに拡大適用したものなのではないかと推測します






*2 バディ・リッチ、ジョー・モレロ、ジム・チェイピン、スティーヴ・ガッド等が良い例でしょう。「あの左手が真似できない」と実感する上級者は少なくないと思います




*3 水掻き状の皮膚は柔らかく、スティックと一体化して動くので、余分な摩擦は生じません。また、いったんマスターした後ならば、スティックを長く持つ事には、何の問題もありません。





*4 レギュラーグリップは「理詰め」のグリップであり、「あるべき物が、あるべき所に」なければ上手く機能しません。
 事実、上手いドラマー達のレギュラーグリップは、ほとんど「そっくり」で、持ち方の個人差が非常に少ないです。






*5 練習段階だけでなく、レギュラーグリップの場合、マッチドグリップよりスネアのセッティングを高めにする必要があります。
 逆に言えば、マッチド向きの低いセッティングでは、レギュラーグリップは使いにくくて当たり前という事です。
 自分のセッティングが悪いのを、レギュラーグリップのせいにしてませんか?







*6 通常のグリップでも、脱力は大事ですが、レギュラーグリップでは、脱力と、摩擦を少なくする事は、ほとんど必須です。





*7 ごく小音量の時以外、ショットの瞬間は、薬指とスティックは離れます。
 正しいレギュラーグリップでは、どこも痛くなったり、タコができたりなどしません。


*8 ジョジョ・メイヤーが『シークレット・ウェポン〜』の中で「人差し指の第2関節に親指を重ねる」と解説していますが、より、脱力しやすいので、僕は指先を重ねる方法をお勧めします。







※レギュラーグリップとモーラー奏法

 一口にモーラー奏法と言っても幅が広いですが、「古典モーラー奏法」に限って言えば『レギュラーグリップの腕と指の使い方を、右手にも拡張したもの』と考えると、非常に理解が楽になります。
 古典モーラー奏法では、手首の上下動を全くと言って良いほど使いませんが、そもそも、レギュラーグリップでは、最初から手首の上下動は使えません。
 「手首の上下動が使えない代わりに、前腕の回内・回外を使う」と考えれば、古典モーラーの右手の動きは、まさしく、そのものズバリです。
 「小指を支点にする」右手のグリップも「レギュラーグリップの各指の機能を、右手に当てはめたもの」と考えれば、左手親指付け根の支点には、右手の小指。左手親指(人差し指)には、右手人差し指(上からのタッピング)、左手薬指には右手親指(下から支える指)が、キレイに対応しています。
 なによりも、モーラー奏法の特徴である『リバウンドを使った片手連打』は、レギュラーグリップで行う方が、ずっと簡単です。
 モーラー奏法を身に付けたいなら、まずは、レギュラーグリップをマスターするのが近道だと、僕は思います。


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