まさしくガッド印なフレーズですが、教則ビデオ『UP Close』の中で、このようなパターンは「ドラマーとしてのチック・コリア」が演奏していたものだと明かしてます。
また、DVD『ライブ・アット・PAS』の中では、同じくガッド18番と思われている手順(RLRL RRLR LRRL RRLR)を 「自分で考えたパターンかって?答えはノー。 昔、ロチェスターで会った、ロン・デーヴィスというドラマーが、これをドン・アライナスに習って僕に教えてくれたんだ」 と、これまた明快に明かしてます。
なんというか、こういうガッドの謙虚さも好きですね。いや、謙虚というより、ある意味「余裕」なのかも知れません。
そう、ガッドの「超人ドラマー」な所は、他のドラマーと圧倒的に違うのは、一言で言えば「余裕」だと思うんですよ。
つまり、我々がCD等で聴けるガッドのプレイは「ほんの氷山の一角」にしか過ぎないんじゃないか、たぶんガッドがその気になったら、もっともっと、とんでもないプレイが出来るんじゃないかと。
ところが、ガッドという人は「出来ても、やらない」から、本当の実力が測りづらい…。でも、注意深く見ていけば、ガッドの「恐るべき余裕ぶり」を様々な場面で見る事が出来ます。
たとえば、少なくとも僕は、他のドラマーのレコーディング風景では見たことがないんですが、ガッドって、レコーディングの本番中に「右手で叩き続けながら、左手でヘッドホン用ミキサーのツマミを調整する」んですよ!
ビデオ『インセッション』の中でも、叩きながらヘッドホンの左側を着けたり外したりしてましたが、『メイキング・オブ・バーニング・フォー・バディPart1』では、叩きながらヘッドホン用ミキサーのツマミを何度も調整しなおしてるんです!!
どうしてそんなことをするのか、いや、出来るのか…?
僕はたぶん、こういう事だと思うんです…。
…かつて、ガッドが本当に多忙で、いろんなスタジオを駆け巡って、1日に何本ものレコーディングをやってた頃、場合によっては、本番前にヘッドホン・ミックスのバランスを確認したり、直している暇すらも無かったんじゃないかと…。
それを繰り返しているうちに、いつしかガッドにとっては「ヘッドホン・ミックスのバランスは本番を録りながら直す」のが「普通」になっちゃったんじゃないかと…。
まさしく、誰よりも修羅場をくぐり抜けて来た、底知れない実力を持ったドラマー、それが、スティーブ・ガッドという人なんだと思います。
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