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★ 超人ドラマー:スティーブ・ガッド


スティーブ・ガッドのことは、当初は書く予定ではなかったんですが、別のエッセイで使うために大昔の自分のテープを聴き直したら、笑っちゃうくらいガッドの真似をしてて、これはやっぱり書かなきゃイカンと思い直しました(苦笑)。

正直、僕自身はあまり「ガッドをコピーした」つもりはなかったですし、ガッドが大人気だった頃(1980年代)は、あまりにも皆が「ガッドガッド」言うので、皆と同じになるのが嫌で、ガッドが叩いてるレコードを聴くのを避けていた位です。





筆者19才頃のドラムソロ(MP3)
3点セットでガッドの真似してます(馬鹿)


それでも、初めて聴いた(1980年代当時の)ガッドのプレイは、やっぱり衝撃的でしたし、そのアプローチは「真似するな」というのが無理な位に魅力的でした。

「機械のように正確」でタイトなリズムと、タムが「どぅ〜ん…」とベンドダウンする独特のチューニング、今までに聴いたことがないようなユニークでキャッチーなフレージング。

あの頃のガッドは、ドラマーじゃない人でも、1小節聴けばすぐに「ガッドだ!」と分かるプレイをしてましたからね。

「黒いスティック」というのも当時は新鮮だった!ガッド・モデル、ヤマハとビックファースから出てましたけど、ビックファースのは当時3800円しましたからね。もったいなくて、買ってもドラムは叩けなかった。

結局のところ、僕もガッドにはハマって、ガッドモデルのスティックを買って、ガッドの十八番フレーズをコピーして、チューニングを真似して、クリニックにも行って…って、思いっきり影響受けてるやん!(苦笑)

ただ、僕なんかは全然中途ハンパです。ガッドのコピーに命をかけていたドラマーは、プロアマ問わず沢山いましたから…。

オリジナリティーが重要なはずの海外でさえ、「なんちゃってガッド」なプレイをするドラマーが次々に出てきて…。

スティーブ・ガッドの登場というのは、それぐらいの大事件だったんです。ドラム史を「ガッド前」「ガッド後」、BG、AGに区切っても良いんじゃないかと思うくらいのね。



でも、僕らにはものすごく新鮮に聴こえたガッドのプレイも、ガッド本人は、教則ビデオの中でネタ元をきっちり明かしてて、たとえば、ポンタさんも驚いた(*1)↓みたいなフレーズ。

*1 あちこちで語ってて、有名ですね。


シンバルのカップがウラで鳴ってるのに、ハイハットは8ウラに鳴ってる


まさしくガッド印なフレーズですが、教則ビデオ『UP Close』の中で、このようなパターンは「ドラマーとしてのチック・コリア」が演奏していたものだと明かしてます。

また、DVD『ライブ・アット・PAS』の中では、同じくガッド18番と思われている手順(RLRL RRLR LRRL RRLR)を

「自分で考えたパターンかって?答えはノー。
昔、ロチェスターで会った、ロン・デーヴィスというドラマーが、これをドン・アライナスに習って僕に教えてくれたんだ」
と、これまた明快に明かしてます。

なんというか、こういうガッドの謙虚さも好きですね。いや、謙虚というより、ある意味「余裕」なのかも知れません。

そう、ガッドの「超人ドラマー」な所は、他のドラマーと圧倒的に違うのは、一言で言えば「余裕」だと思うんですよ。

つまり、我々がCD等で聴けるガッドのプレイは「ほんの氷山の一角」にしか過ぎないんじゃないか、たぶんガッドがその気になったら、もっともっと、とんでもないプレイが出来るんじゃないかと。

ところが、ガッドという人は「出来ても、やらない」から、本当の実力が測りづらい…。でも、注意深く見ていけば、ガッドの「恐るべき余裕ぶり」を様々な場面で見る事が出来ます。

たとえば、少なくとも僕は、他のドラマーのレコーディング風景では見たことがないんですが、ガッドって、レコーディングの本番中に「右手で叩き続けながら、左手でヘッドホン用ミキサーのツマミを調整する」んですよ!

ビデオ『インセッション』の中でも、叩きながらヘッドホンの左側を着けたり外したりしてましたが、『メイキング・オブ・バーニング・フォー・バディPart1』では、叩きながらヘッドホン用ミキサーのツマミを何度も調整しなおしてるんです!!

どうしてそんなことをするのか、いや、出来るのか…?

僕はたぶん、こういう事だと思うんです…。

…かつて、ガッドが本当に多忙で、いろんなスタジオを駆け巡って、1日に何本ものレコーディングをやってた頃、場合によっては、本番前にヘッドホン・ミックスのバランスを確認したり、直している暇すらも無かったんじゃないかと…。

それを繰り返しているうちに、いつしかガッドにとっては「ヘッドホン・ミックスのバランスは本番を録りながら直す」のが「普通」になっちゃったんじゃないかと…。

まさしく、誰よりも修羅場をくぐり抜けて来た、底知れない実力を持ったドラマー、それが、スティーブ・ガッドという人なんだと思います。



…と、ちょっとベタ誉めしちゃったんで(苦笑)、しいてガッドの欠点をあげれば、意外とガッドって良い時と悪い時の差が激しくて、けっこう「イモ」なプレイも残ってますね。(*2)

『インセッション』のビデオでも、セッション(特に後半のラテン系)での演奏は凄いけど、最初のドラムソロは(悪い意味で)かなりヤバイですもん。




*2 例えばアル・ジャロウの『ジャロウ』でのプレイ。どの曲のプレイにも「冴え」がなく、ジェフ・ポーカロが叩いている他の数曲と比べて、音色も、フレージングも、グルーヴも、すべてダメダメな感じです。


ともあれ、クラプトンと演り始めてからのガッドは、あまりにも「シンプルを極めすぎ」ちゃってて、「ガッドは凄い」って言ってもピンと来ない人も多いと思うので、そういう人には、何度も例に挙げている『インセッション』のビデオをオススメします。(*3)

冒頭のソロはともかく、実際のレコーディングやリハーサル風景の映像を細かく見て、聴いていくと、ガッドの「音楽家」としての凄さも分かって来ます。

特に、「譜面にしたら全く同じになってしまう」ような曲の繰り返し部分で、グリップを変えたり、手順を変えたりして、毎回微妙にニュアンスを変化させていくアプローチには、後の「シンプルを極める」萌芽が感じられたりして興味深いです。

なんだかだ言って、やっぱりスティーブ・ガッド、凄いですよ。





*3 『インセッション』のビデオで大変残念だったのは、ひどく音がこもってて音質が悪かった事ですが、DVDで再発されているものは直ってるんでしょうかね?


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