事実、動画で紹介した3人のプレイも、スピードは間違いなく凄いものの、音色やダイナミクスの変化は少なく、どちらかといえば機械的な演奏だと思いませんか?(*5)
スピード面では最強なグラッドストーン奏法ですが、原理的に「高速領域ではパワーが出せない」「アクセント表現に弱い」「音色が一定」という弱点があるのです。
一方、モーラー奏法には、「高速領域でもパワーが出せる」「アクセント表現に強い」「音色が多彩」という、グラッドストーンの弱点を、ことごとく補う利点があります。 実は、バディ・リッチは、モーラー奏法とグラッドストーン奏法の両方を、非常にハイレベルにマスターしていて、状況によって使い分けてプレイしていたのです。
しかし、「バディ・リッチはモーラー」だと思い込んでいると、グラッドストーンの部分までもモーラーだと思ってしまい、二つの奏法を混同してしまう結果になりがちです。
そうならないためには、「グラッドストーン要素の入っていないモーラー」を知る必要があります。
ただし、一見してそれと分かるグラッドストーン奏法と違い、モーラー奏法は、典型的な分かりやすい動きの人から、一見モーラーには見えない変則的な人まで、かなり様々です。
そこで最初は、「典型的な分かりやすいモーラー奏法」から見て頂く事にしましょう。
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