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★ 誤解・混同されている、モーラー奏法とグラッドストーン奏法の「違い」と「見分け方」
※ページ内に動画が表示されない場合は、動画の紹介文(☆印)をクリックして下さい
第1章:「凄いスピード=モーラー奏法」という誤解と、グラッドストーン奏法


今や「モーラー奏法」という名前を知らないドラマーは、ほとんどいないと思いますが、それが、どんな奏法なのかを正確に理解している人は、意外に少ないと思います。

たとえば、下の動画を見てみて下さい。



☆手足共に、280BPMの16分音符まで“安定した演奏”が可能な、ジョージ・コリアス


このような演奏を見て「凄い!これがモーラー奏法か!」と思っている人が少なくないようですが、それは間違いです。

デスメタルやグラインドコアに代表されるような、異常な速度で延々と叩き続けるドラマー達が使っているのは、モーラー奏法ではなく、グラッドストーン奏法なのです。(*1)

現在のところ、スピードと持久力の両面から考えるなら、グラッドストーンを超える奏法は存在しません。

事実、ワールド・ファステスト・ドラマーという大会の上位入賞者は、全員、グラッドストーン系の奏法です。(*2)

つまり、とにかく速い演奏をしたいなら、モーラーではなく、グラッドストーンをマスターすれば良いという事です。

あと二つ、グラッドストーン奏法の分かりやすい動画を紹介しますので、そのスピードの威力を実感して下さい。







*1 「モーラー奏法を全く使わない」という意味ではありません。上手いドラマーなら、たとえ独学の人でも、奏法のどこかに必ずモーラーの要素は入っています



*2 マイク・マンジーニも、かなり変則的ではありますが、グラッドストーン系です
(百歩譲ってもモーラーではありません)


☆自らの奏法を「モーラー殺し」と呼んでいる、セス・デイビス


☆「バディ・リッチより速い」(?!)が売り文句の、アート・バーディ


二人とも、過去に一度は『世界最速ドラマー』の称号を得ているだけに、ムチャクチャ速い上に、持久力もハンパじゃないですよね? これが、グラッドストーン奏法なんです。

動きの特徴は、主に指だけでストロークが行われるため、移動の時以外は、ほとんど腕と手首が動かず、高速で動くスティックの、扇形の残像が目につくという事です。

「ちょい待ち! アート・バーディって人の叩き方、バディ・リッチそっくりに見えるんだけど、モーラーじゃないの?

そうそう!ポイントは、そこなんです! 僕も最初は、アート・バーディはモーラーだと思ったんですよ。(*3)

ところが、アート・バーディ本人が、自分の奏法は「グラッドストーン」だと、ハッキリ語っている動画があるんです。

*3 動画で紹介した3人の中では、バディ・リッチの影響が強いためか、最もモーラーの要素が多いのは確かです。
(それでもモーラー要素は「2割」程度)


☆「グラッドストーン奏法」について語る、アート・バーディ


グラッドストーン奏法は、ビリー・グラッドストーンと、ジョージ・ローレンス・ストーン(*4)によって1920年代に確立されました。

その1人である、ビリー・グラッドストーンは、クラシック・マーチング系の、天才的なスネアドラマーで、「シングルストロークロールの達人」でした。

そして、若い頃のバディ・リッチは、ビリー・グラッドストーンのシングルストロークロールを見るために、毎晩のように劇場に通っていたそうです。

つまり、バディ・リッチの代名詞にもなっている、あの凄まじいシングルストロークは、オリジナルではなく、ビリー・グラッドストーンの奏法を、そのまま真似したものだったんです。

アート・バーディが、一見バディ・リッチそっくりに見えるのも、グラッドストーン奏法が共通しているからです。

しかし、グラッドストーン奏法だけでは、バディ・リッチのように、「ダイナミックで、パワフル。かつスピーディ、そのうえ音楽的」なプレイは出来ません。



*4 ジョージ・ローレンス・ストーンは、『スティックコントロール』という超有名な教則本の著者であり、高速連打のための練習法『ストーンキラー』の考案者です。




★グラッドストーン奏法のドラマー達
 ビリー・グラッドストーンの直弟子だったのが、シェリー・マンとジョー・モレロです。共に、スピード面だけならバディ・リッチにもひけを取りません。
 他の典型的なグラッドストーン系は、ビリー・コブハム、サイモン・フィリップス、イアン・ペイス、マーヴィン・スミティ・スミス等。
 特殊奏法を使っていない時のジョニー・ラブも、典型的なグラッドストーンです。
 そして、デスメタルとかグラインド・コア等の「超高速ドラマー」の大部分ですね。
(※動画や文中で紹介した人は除外)


事実、動画で紹介した3人のプレイも、スピードは間違いなく凄いものの、音色やダイナミクスの変化は少なく、どちらかといえば機械的な演奏だと思いませんか?(*5)

スピード面では最強なグラッドストーン奏法ですが、原理的に「高速領域ではパワーが出せない」「アクセント表現に弱い」「音色が一定」という弱点があるのです。

一方、モーラー奏法には、「高速領域でもパワーが出せる」「アクセント表現に強い」「音色が多彩」という、グラッドストーンの弱点を、ことごとく補う利点があります。

実は、バディ・リッチは、モーラー奏法とグラッドストーン奏法の両方を、非常にハイレベルにマスターしていて、状況によって使い分けてプレイしていたのです。

しかし、「バディ・リッチはモーラー」だと思い込んでいると、グラッドストーンの部分までもモーラーだと思ってしまい、二つの奏法を混同してしまう結果になりがちです。

そうならないためには、「グラッドストーン要素の入っていないモーラー」を知る必要があります。

ただし、一見してそれと分かるグラッドストーン奏法と違い、モーラー奏法は、典型的な分かりやすい動きの人から、一見モーラーには見えない変則的な人まで、かなり様々です。

そこで最初は、「典型的な分かりやすいモーラー奏法」から見て頂く事にしましょう。




*5 ドラム演奏において「機械的正確さ」や「速度の快感」は非常に大切です。
それを否定するつもりは全くありません。


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