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★ 誤解・混同されている、モーラー奏法とグラッドストーン奏法の「違い」と「見分け方」
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第四章:グラッドモーラー(モーラーとグラッドストーンの併用)は最強の奏法か?


モーラー奏法と、グラッドストーン奏法の「違い」や、それぞれの「動きの特徴」「フレージングの傾向」について等は、前章までで、すでに理解して頂けたと思います。

そこで最後は、モーラーとグラッドストーンの両方をバランス良くマスターし、適材適所に使い分けて、スーパープレイを実現しているドラマー達の動画を見てみて下さい。



☆モーラーだけでなく、グラッドストーンの達人でもある、バディ・リッチ


☆グラッドストーンのスピード+モーラーのパワーと表現力=デニチェン


どうですか? ノーアクセントの高速シングルストロークが続く場面では、腕は移動だけに使い、主に指でストロークする、グラッドストーン奏法の特徴が見られます。

そして、連打の中にアクセントを入れたり、高速のシングルストロークを使わない時は、肩やヒジの回転する、モーラー奏法の特徴が出ているのが分かると思います。

つまり、バディ・リッチやデニス・チェンバースは、モーラーだから速いのではなく、グラッドストーンだから速く、モーラーだからパワフルで、表現力も豊かなのです。

これは、この二人に限らず、トップドラマー達は、たいてい、モーラーとグラッドストーンを適材適所に使い分ける、グラッドモーラーとでもいうべき奏法で演奏しています。

そういえば、バディ・リッチがグラッドストーン奏法を身につけた経緯は、第一章で書きましたが、モーラー奏法の方は、どうやって身につけたのでしょうか?

当たり前の事ですが、サンフォード・モーラーに奏法を習ったのは、ジム・チェイピンだけではありません。

有名な直弟子の1人は、ジーン・クルーパです。ジーン・クルーパこそが、初期のセットドラミングにおけるモーラー奏法を代表するドラマーなんです。

そして、モーラー奏法そのものは、サンフォード・モーラーが書籍化する、はるか以前から「軍楽隊のスネアドラム奏法として」存在していた事実も忘れてはいけません。

ジャズ草創期のドラマーは、ほとんどが「軍楽隊のスネアドラマー出身」ですから、ジャズ初期には、むしろ、モーラー系のドラマーは多数派だったのではないでしょうか?

★グラッドモーラーのドラマー達
 若い頃のトニー・ウイリアムス(なぜか晩年は逆モーラーに移行)、ヴィニー・カリウタ、デイヴ・ウェックル、スティーヴ・スミス等はもちろん、元々はグラッドストーン系だったピーター・アースキンが、フレディ・グルーバーに師事してモーラー要素が増えてから、非常に素晴らしいドラマーになったと感じているのは、僕だけでしょうか?
 また、ジョジョ・メイヤーやトーマス・ラング、ギャビン・ハリソン等の超絶テクニック派はもちろん、若手筆頭の、トニー・ロイスター・Jrやトーマス・プリジェン等も。
(※動画や文中で紹介した人は除外)


実際に、スイング、ビッグバンド時代の有名ドラマー達には、モーラー系の人が非常に多く、そうじゃない人を探す方が難しい位です。(*1)

1917年生まれのバディ・リッチも当然、ビリー・グラッドストーンに注目していたのと同様に、ジャズ初期の有名ドラマー達の事も、チェックしていたはずです。

バディ・リッチのモーラーは、当時の有名ドラマー達の奏法の「良いトコ取り」をしたものでしょう。

特に、パパ・ジョー・ジョーンズと、レイ・ボデュークの二人からは、かなり大きな影響を受けたと推測しています。

二人の動画を見てみて下さい。バディ・リッチが二人から何を取り入れたのかが、良く分かるはずです。




(*1) しかし、その後、少人数のコンボジャズが主流になると、小音量の演奏には、ヒジを脇につけ、手首から先だけでストロークする奏法(例:MJQのコニー・ケイ等)の方が向いていたため、モーラー奏法のドラマーは減って行ったのです。
 とはいえ、モーラーの系譜が途絶えたわけではありません。たとえ、ジム・チェイピンが登場しなかったとしても、モーラーの直弟子でなくても、同系統の奏法を引き継いできた流れは常に存在し続けており、「モーラー」という名前を知らなくても、同系統の奏法を習い、教え続けている人々が、米国内には常にいるからです。
 この辺の事情は日本とは全く違います


☆クラシック・ジャズ・ドラミングの偉大な父:パパ・ジョー・ジョーンズ


☆この人より「柔らかい」ドラミングは見た事がない! レイ・ボデューク


どうですか? パパ・ジョー・ジョーンズのバズロールや、レイ・ボデュークのセットの扱い方、そして何より、二人の「派手過ぎない見せ方」(*2)を、バディ・リッチは受け継いだのでしょう。

ところで、この二人の映像を初めて見た時、僕は「昔のドラマーって、こんなにオシャレだったんだ!」と驚きました。

今やドラマーといえば「バンド内で最も体育会系な人」というイメージが定着してしまい、「ドラミング≒スポーツ」になってしまってますが、昔は違ったんですね。

残念ながらバディ・リッチは、この二人の「優雅さ」や「オシャレ感」までは、取り入れ(られ)なかったようです(苦笑)。




*2 なぜかバディ・リッチは、スティックを「回したり」「投げたり」「ポーズを決めたり」を、ほとんどやりません。ジーン・クルーパや、ソニー・ペインのような「派手な見せ方」は、あまり好きではなかった?


バディ・リッチが残した功績は、本当に大きいものですが、同時に「ドラミングはスポーツ」というイメージを、人々に強く植え付けてしまった主犯の1人であるのも事実でしょう。(*3)

しかし、パパ・ジョー・ジョーンズやレイ・ボデュークのように、スポーツ的な価値観とは正反対の方向で、素晴らしい演奏を実現していたドラマー達が、かつてはいたのです。

モーラーだ、グラッドストーンだという議論だけに終始するのではなく、本来のドラミングが持っていた、もっと広い可能性にも、目を向けて頂ければ…と思いつつ、このエッセイを閉じる事とします。

長文をお読み頂き、ありがとうございました。




*3 まあ、「ドラマーは体育会系」のイメージを決定的にしたのは、ジョン・ボーナムだと思いますけどね(苦笑)。
 この傾向は、スティーヴ・ガッドの出現により、いったん方向転換され、「知的なドラミング」が高く評価された時代もありましたが、デニス・チェンバースのインパクトが大きすぎたのか、以降はずっと、手数が多く叩きまくるドラマー程、評価が高いという傾向が続いているわけです。


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