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★ 誤解・混同されている、モーラー奏法とグラッドストーン奏法の「違い」と「見分け方」
※ページ内に動画が表示されない場合は、動画の紹介文(☆印)をクリックして下さい
第3章:変則的ではありますが、これらも、モーラー奏法です。


では、変則的なモーラー使いの動画を見て頂きましょう。

典型的なモーラーとは違って、一見モーラーには見えない場合も多々あるので、このページでは、一つ一つの動画に、具体的な解説を付けて行きます。



☆変則モーラー(1):大パワーが得られる、ボンゾ式「逆モーラー」


ジョン・ボーナムの場合、まず第一に、パワー系ドラマーなのに、意外にスティックを短く持っている所がポイントです。

特に右手の人差し指が、ユルユルなのが分かりますか? 対して、小指側は「握りっぱなし」に見えますよね?

これは、教則本:『モーラーブック』に載っているのと同じ、小指側に支点があるグリップだからです。(*1)

ただし、通常のモーラーと違い、フレンチグリップの形で持っているため、ストロークも通常とは逆で、回内で振り上げ、回外で振り下ろす形になっています。

すべてのストロークが、手首からではなく、ヒジや肩の方から動いているのが、よく分かると思います。

僕は「逆モーラー」と呼んでいますが、このやり方を使うと、非常に大きなパワーを得る事が出来るので、欧米のパワー系ロックドラマーは、よく、このスタイルを使っています。

(注:普通の奏法のまま、形だけ「逆モーラー」を真似すると、高確率で手首を傷めます。安易に真似しないで下さい)

(*1) 意外に知られていない事ですが、本来のモーラーは、マッチドの場合、小指でグリップするのが原則です。そういう意味では、ジョン・ボーナムのモーラーは変則的でも「基本に忠実」と言えます。
 また、支点は小指なので、見た目とは違い、実際にはスティックを短く持ってはいません。だからパワーがだせるのです。
 さらに、本来的には、モーラー奏法の最も大切な定義は、動きが必ず「胴体側から始まる」という所にあります。
 ヒジの開閉や、前腕の回内・回外は、その「結果」にしか過ぎません。
 まして、スティックの動き方などは、文字通り「枝葉末節」でしかありません。




☆変則モーラー(2):音色とダイナミクスの妙。「表現力」のモーラー


パーディの場合、正面からの映像だけだと、モーラーの動きが分かりにくいのですが、この動画では、横や斜め後ろからの映像で、モーラー独特の動きを多々見る事が出来ます。

まずは、左腕のバックビート。手首で振り上げるのではなく、文字通り、肩からのムチのような動きで、しかも、完全に回内を使って、スネアの外側から叩いていますよね?

右腕も、特に、右後ろの角度からだと、非常に特異な動きに見えます。腕がグルグル回っているように見える場面もあります。このような動きは、あまり見た事がないはずです。

また、ハイハットにアクセントを付ける時の、前腕で押すような動きも、あまり見た事がないのでは? やはりこの人も、振り幅は小さいのに、ドラムの音が非常に太いです。

手首が上向きになっている場面が、ほとんどなく、むしろ、手首が下を向いている時間が長い所などは、モーラーの特徴そのものと言えます。(ジム・チェイピンもそうですよね?)



☆変則モーラー(3):左手は順モーラー、右手は逆モーラー


デヴィッド・ガリバルディのモーラーは、本当に変則的です。

右手は常に逆モーラー(回外でショット)で、左手は常に順モーラー(回内でショット)という、マッチドグリップなのに、左右非対称の状態で叩いているのです。

日本的な価値観では、左右の手が揃っていないのを「ダメ」と決め付けてしまいがちですが(*2)、ガリバルディが、このスタイルで演奏しているのには、ちゃんと理由があります。

それは、一般的に、タムやシンバルにはフレンチグリップ、スネア、特にゴーストノート的な演奏には、ジャーマングリップの方が向いているという事です。(※もちろん、音楽性や「好み」によって、逆の意見も出てくるでしょう。それを否定するつもりはありません)

ガリバルディの場合、ジャズのドラミングと同様に、右手と左手を別々の楽器に配して演奏している時間が長く、特に、左手がスネア上でゴーストノート的な演奏をする比率が高いので、自然にこのスタイルに落ち着いたのでしょう。

動きが非常にコンパクトなので、一見、普通の奏法っぽく見えますが、注意深く見て頂ければ、右手も、左手も、手首の上下ではなく、回内、回外の動きがメインに使われている事が分かると思います。

事実、振り幅が非常に小さいのに、タムやスネアの、くっきりしたアクセントと、柔らかなゴーストノート的な音との「音色の差」が広い、ダイナミックな演奏になっていますが、普通の「手首奏法」では、こんなコントラストは出せません。

なお、右手は、速い領域では瞬間的にグラッドストーン系(指によるストローク)の奏法も使われています。









(*2) ドラム雑誌の記事で、ジェフ・ポーカロの左手を「アメリカングリップのかぶせ打ちみたい」で良くないと批判している意見を読んだ事がありますが、こういう「音楽的には素晴らしいけど、奏法的には良くない」みたいな意見は、全く意味がないばかりでなく、ある種の「詭弁」です。
 奏法の優劣は、音楽的に有意かどうかで判断されるべきであり、実際に優れた音楽演奏を行っているドラマーの奏法こそが、より優れた奏法なのです。


いかがですか? まったく意外な人までが、モーラー使いだったという事を、ある程度納得して頂けたと思います。

まだまだ他にも「一部だけモーラー」の人まで含めれば、モーラー奏法を使っているドラマーは本当に沢山います。

しかし、「モーラー=スピード」という認識では、そういう事実を見逃してしまい、「スピードには興味がないから、自分にモーラーは関係ない」という間違いを犯す原因にもなります。

モーラー奏法を「万能」「最強」視するのは愚かですが、
「モーラー奏法じゃなくても優れたドラマーは沢山いる!」などと言って無視しようとするのも、同じくらい愚かです。

現実に、肉体を動かして物理的に演奏するものなのに「奏法など無関係」なはずがないじゃないですか…。

パワーやスピードだけでなく、タッチやグルーヴ表現にまで、間違いなく奏法は関係します。いやむしろ「奏法はプレイの基本傾向を決めてしまう」とさえ言えると思います。

実際に、グラッドストーン系のドラマーは音数の多いスピードプレイで、モーラー系のドラマーはアクセントや音色表現中心のプレイになっている事が、ここまでの動画で明らかでしょう。

ところで、モーラーとグラッドストーンが面白いのは、この二つの奏法は、対照的でありながら、けっして「相反する」ものではないという事です。

事実、前章でも書いたように、バディ・リッチや、ジム・チェイピンは、この二つの奏法を、両方共にバランスよくマスターして、状況により使い分けています。

グラッドストーンの超絶スピードに加えて、モーラーのパワーやアクセント表現、音色の多彩さまでを使いこなした、ダイナミックで音楽的な演奏は、ある意味、ドラミングの理想といえるかも知れません。

僕は仮に「グラッドモーラー系」と呼んでいるのですが、そんなドラマー達を見て頂こうと思います。


★変則モーラー奏法のドラマー達
 パワー系の『逆モーラー』は、コージー・パウエルやキース・ムーン、トミー・アルドリッジ、トラヴィス・バーカー等です。
 表現系には、ジェフ・ポーカロやリック・マロッタ、ハーヴィー・メイソン等。
 また、リンゴ・スターの「うちわを振っているみたい」な右手も、非常に独特ですが、モーラー奏法の範疇に入ります。
 さらに、エルビン・ジョーンズやエンドゥーグ・チャンスラー、ブライアン・ブレイド等の黒人系独特(?)のモーラーもあります。
(※動画や文中で紹介した人は除外)


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