いかがですか? まったく意外な人までが、モーラー使いだったという事を、ある程度納得して頂けたと思います。
まだまだ他にも「一部だけモーラー」の人まで含めれば、モーラー奏法を使っているドラマーは本当に沢山います。
しかし、「モーラー=スピード」という認識では、そういう事実を見逃してしまい、「スピードには興味がないから、自分にモーラーは関係ない」という間違いを犯す原因にもなります。
モーラー奏法を「万能」「最強」視するのは愚かですが、 「モーラー奏法じゃなくても優れたドラマーは沢山いる!」などと言って無視しようとするのも、同じくらい愚かです。
現実に、肉体を動かして物理的に演奏するものなのに「奏法など無関係」なはずがないじゃないですか…。
パワーやスピードだけでなく、タッチやグルーヴ表現にまで、間違いなく奏法は関係します。いやむしろ「奏法はプレイの基本傾向を決めてしまう」とさえ言えると思います。
実際に、グラッドストーン系のドラマーは音数の多いスピードプレイで、モーラー系のドラマーはアクセントや音色表現中心のプレイになっている事が、ここまでの動画で明らかでしょう。
ところで、モーラーとグラッドストーンが面白いのは、この二つの奏法は、対照的でありながら、けっして「相反する」ものではないという事です。
事実、前章でも書いたように、バディ・リッチや、ジム・チェイピンは、この二つの奏法を、両方共にバランスよくマスターして、状況により使い分けています。
グラッドストーンの超絶スピードに加えて、モーラーのパワーやアクセント表現、音色の多彩さまでを使いこなした、ダイナミックで音楽的な演奏は、ある意味、ドラミングの理想といえるかも知れません。
僕は仮に「グラッドモーラー系」と呼んでいるのですが、そんなドラマー達を見て頂こうと思います。
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