こちらにも書いていますが、初めてこの人のプレイを聴いた時に、「なんだ、ビートルズ後期のリンゴとそっくりじゃん」と思って、思い切りノーマークにしちゃったのは、僕のドラム人生で最大の失敗だと思ってます。
なぜって、パーディの教則ビデオを見て以来、僕のドラミングに対する価値観は、完全に「グルーヴしなけりゃ意味がない」になってしまったからです。
ここ15年位の間で、一番大きな影響を受けたドラマーは、誰あろう、パーディなんです。もっと早く注目していれば…。
もちろん、『デモ動画』に出してるように、スピードや特殊奏法への興味も残ってますが、ドラマーにとって最も大切なのはグルーヴ=聴いた人の身体が思わず動き出してしまうような、心地良いリズムを作り出す事だと、今は思います。
パーディにハマる以前から、ハービー・メイスンや、ジェフ・ポーカロ、オマー・ハキム等、グルーヴ面で優れたドラマーが好きでしたが、パーディは本当に別格です。
「リズム刻んだだけで、こんなに気持ち良いなら、もう、テクニックなんて、ホントにどうでも良いじゃん」とまで思ったのは、パーディが初めてでしたからね(笑)。
なにしろ、あのジェフ・ポーカロをして「僕はもう、『安らぎの家』のグルーヴを自分のものにできたら死んでもいい。」と言わしめた、そのグルーヴはハンパじゃないです。
冗談抜きで、『安らぎの家』を聴いた事がないという人には、これを読んだ後、すぐにでもレンタル屋に行って、スティーリー・ダンの『Aja』を借りる事をオススメします。
『安らぎの家』の、ずっしりと重く、それでいて鋭いキックとスネア。タイトなのに、浮遊するみたいなハイハットの刻み。心地良く耳をくすぐるゴーストノート。ゆったりとして、かつ、スリリングなハーフタイム・シャッフル。
「…なるほど、これじゃポーカロが『死んでも良い』と言うわけだ…」と、心底納得しましたよ。
それで、パーディの教則ビデオが出た時は、即座に買ったわけです。そしたら、なにやら怪しげな風貌のオヤジ(ぉぃ)が出て来て…
「僕は、世界一録音されたドラマーなんだ。4000枚以上ものアルバムでプレイしてるよ」
…と、いきなりビッグマウス。正直、ちょっと「ガク」って(苦笑)。
でも、次の瞬間、耳に入って来た「ドダッダンッ」ていう、音色とタイミングが、もう、全然違う! ぅおおっ!!
ポーカロの教則でも、何気ない8ビートに、ぶっ飛ばされましたが、パーディには、たった3発でノックアウトですよ(笑)。
それにしても不思議なのは、ガッドやポーカロなんかだと、スネアはもちろん、タムやシンバル単体でも「やっぱ良い音してるよなぁ〜」と思うわけです。
ところが、パーディが教則ビデオで叩いてるセットは、タイコもシンバルも、単体ではちっとも良い音じゃないんです。
それこそ、その辺のスタジオに置いてある、ロクにチューニングもされてないドラムみたいな音で、ソナーのセットだというのが信じられない位、ショボイ音なんです。
ところが、パーディがリズムを叩き始めると、途端に良い音になっちゃう。すごく音楽的な良い音になっちゃう。
それと、このオヤジ(ぉぃ)、叩きながら喋りまくるんです。 「僕は、ルーディメンツでウォーム・アップするんだ」って言って、叩きながら、どんどん説明していく。
そのルーディメンツが、また型破りで、普通の5ストロークは、RRLLRという手順なのに、パーディのは、RRRRLなんですよ(笑)。9ストロークでも、RRRRRRRRL。
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