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★ マイ・フェイバリット・ドラマー:リンゴ・スター


最近はちょっと変わって来たみたいですが、少なくとも前世紀までの日本で、特にフュージョン,ヘヴィメタ系のアマチュアドラマー達からの、リンゴの評価は非常に低かったですね。

まあ、僕もリンゴを『超人ドラマー列伝』に加えようとまでは思いませんが、「ビートルズのリンゴ? ヘタでしょ」と、あまりに簡単に言う人が多くて、かなり悲しかったです。

でも、どうも僕には、リンゴ・スターを「ヘタ」だと言っている人達は、以下のような事実を知らずに、「イメージだけ」で語っている無責任な人が多いような気がするんですよねぇ…。


※リンゴのドラミングの特徴や魅力に関しては、『ビートルズのドラム疑惑について』で書きましたので、ここでは<日本ではドラマーとしてのリンゴの評価が低すぎる>という点に焦点をあてる事にしました。

☆リンゴはヘタじゃないという、これだけの証拠


少なくとも、「194BPMのシャッフルを、歌いながら楽々と、約2分半(129小節)ノンストップで叩き続けられる人」に対して、「ヘタ」という評価はどうにも変ですよ。(*1)

『ラバーソウル』の『消えた恋(WHAT GOES ON)』(↓楽譜)の事ですけど、リンゴをヘタだと思っているドラマーの人達は、まず間違いなく、この曲を聴いたことがないんでしょう。




*1 「ライブじゃないのに、歌いながら叩いてはいないだろう」という方がいそうなので一応。エンディングの方を良く聴くと、叩きながら歌った「仮ボーカル」の一部が残っているのが確認出来ます。


    “WHAT GOES ON”(Rubber Soul)
What Goes On フィルインが全然無いので「ループじゃないのか?」と疑う人もいそうですが、2拍・4拍のスネアが、所によってリムをかけたり、かけなかったりなので、生演奏です。
 しかも、フィルインが無いということは、129小節もの間、右手は全く休めないわけですから、かなりの余裕で叩けない限り、エンディングまでは辿り着けません。


194BPMのシャッフルをノンストップってのは、アマチュアドラマーの大部分が2分に至らずに轟沈し、プロでも喜ぶ人はほとんどいないであろう、かなり過酷な条件です。

だって、あのTOTOの『ロザーナ』でも170BPM位ですからね。少なくとも、ロザーナのハイハットワーク位は余裕でこなせる人じゃないと、絶対に無理なテンポという事です。



それを、利き手じゃない方の右手で、余裕で軽快なノリをキープして叩けてるリンゴが、ヘタなわけないですよ!(*2)

しかも、つい最近分かった事ですが、リンゴがライドでシャッフルを叩く時の右手の動きは、トニー・ウイリアムスがシンバルレガートで5連打を行う時と、全く同じだったんです。

トニーの5連打(*3)を、なんとか真似できないものかと練習していて、ようやく、手の動かし方だけはつかめたという時に、「あれ? この動き、リンゴの右手と同じじゃん…」と。

まさか、トニーとリンゴがつながるとは思ってなかったんで、驚きましたが、ためしに、その動きを使ってシャッフルを叩いてみると、なるほど、テンポ194でも楽勝で叩けるんです!

でも、ちょっと待てよ…と。これって、そんなに簡単に身に付く動きじゃないんですよ。だって僕自身は、練習を始めてから出来るようになるまでに、3年以上かかってますから。

しかも、利き手の左手でしか出来ないし、まだ安定しないし(苦笑)。マジで、片手ロールなんかよりも、はるかに難しいです。(※『片手ロール』筆者によるデモ動画



*2 リンゴ・スターは左利きだというのは有名ですが、ポール・マッカートニーと違って「ペンを持つのは右手」という、筆者と同じ、両利きに近いタイプです。だからこそ、通常の右セットで、右手リードのまま、あれだけのプレイが出来たのでしょう。


*3 トニーの5連打とは…
ジャズ史上最高の天才ドラマー:トニー・ウイリアムスが10代の頃、高速シンバルレガートの際に多用した、誰も真似出来ない、超高難度のドラムテクニックの一つ
筆者の「トニーの5連打」再現動画
(注:本人の演奏はもっともっと速い!)


ところがリンゴ本人は、ある雑誌のインタビューで「練習ってのが、僕はどうしても出来なかった。ドラムセットの前に座っても、2分もすると飽きちゃってね」なんて言ってるんです。

冗談じゃないですよ(苦笑)。あの動きを、練習しないで出来たなんて、もしかして、リンゴ、マジで天才じゃない!?

少なくとも、僕が好きな他のドラマー達の誰一人として、練習してないなんて人はいないですから、練習してないドラマーとしてなら、リンゴが1番上手いかも知れない。

同時に、バズロールがいまいちヘタ(これには異存ありません:笑)だったり、時々タイムが悪かったり、普段は右手リードなのに、フィルインになると左手からしか叩けなかったりするのも、練習してないなら不思議じゃないな…とも思いましたけどね。

それにしたって、練習してないドラマーが、あんなに幅広いアプローチが出来るっていうのが、信じられないです。他のドラマーが全然やらないような事を、簡単にやりますからね。

『アビイ・ロード』の『サン・キング』なんか、基本はバスドラムとフットハイハットだけ。あんな静かな曲でキックをメインに持って来るという大胆さ! しかも、フレージングも、ダイナミクスも見事に歌ってる上に、安定感が素晴らしい!


“SUN KING”(ABBEY ROAD)の基本パターン例
SUN KING(ABBEY ROAD)の基本パターン例


いくら、小音量のコントロールや連打が楽なスピードキングペダルだからって、練習してなくて、あの安定感と歌い方なわけでしょ? 練習したら、どうなっちゃうの?(苦笑)

フィルインも「何も考えてない。同じ事は2度と出来ない」とか言いながら、なんであんなに曲にピッタリ合ったフィルを、バッチリなダイナミクスとタイミングで決められるのか?

他にも、オマー・ハキムだけかと思ったキックのゴーストノートを、ビートルズ初期の頃からやってたり、スティックを横向きに振る独特の奏法も、8ビートとシャッフルの時では、逆向きにしていたり…と、リンゴのプレイを細かく見て行くと、何気に、信じられないような事を沢山やってるんです。

これだけの事実を知れば、少なくとも、ビートルズのドラマーとしては、間違いなくリンゴがベストだと思いますし、ビートルズを抜きにしても、とても「ヘタ」だなんて言えませんって。

それに、ジョン・レノンの最高傑作アルバム『ジョンの魂』のドラマーとして、あのリンゴ以上のプレイやアプローチが出来る人は、どう考えても、まったく思い当たりません。

なので、今までどうしてもリンゴの良さ・凄さが分からなかったという方には、『ジョンの魂』を聴く事をオススメします。歌伴(歌モノのバッキング)のドラムとしては、究極だと思いますので。


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